世界を変える願い事







『ハル!ここで腹ごしらえしてから動物園に入りましょっ!』


シンディ達がレストランに入ってくるなり開口一番にユイは生き生きとした顔で言い放った。


『ユイ……今はそんな暇は無いわよ。
一刻も早く救助ヘリに乗らないと。
こんな状況では何時まで飛んでいるのか怪しいわ。』


アリッサにそう言われてもユイは首を横に振った。


『だからこそ、よ。
何時まで飛んでいるのか怪しいんだったら、私達が今行ってももうヘリが飛んで無い可能性だってあるもの。
その場合、私達はまた別の脱出手段を探さないといけなくなるわ。』


皆口にこそ出さないが内心その可能性は考慮している。

ジョージは何と無くユイが言わんとしている事を察した。


『日本の諺に、《腹が減っては戦は出来ぬ》ってあるんだけど当にその通り。
食べられる時にしっかり食べとかないと、いざって時に全力なんて出せないもの。
空腹は冷静な判断力を奪うわ。
……それは今この状況下では致命的な事。
この先で何時食料にありつけるのかは誰にも分からない。
脱出まで何れくらいかかるのかさえ分からない今は、極力身体的にも精神的にも万全を期しておくべきだと思うわ。
食べる時間を惜しむよりも、ここでちゃんと栄養を取って行く方が合理的でしょ?』


ユイが述べた正論にアリッサも反論は無い様だ。

今までは一杯一杯で全然気が回らなかった為気付いてはいなかったが、少し一息つく余裕が生まれた今、ジョージは自分が酷く空腹である事に気が付いた。

まぁそれは無理もないだろう。
J's Barから逃げ出してから何も口にしていないのだ。
水すらろくに飲んだ覚えが無い。

何かを食べておかないと何時倒れても可笑しくない状態である。
ここはユイの言う通り腹ごしらえをしておくべきだ。


だが………。




『はぁ、分かったわ。
で?何を食べるの?
さっき私も確認したけどここにあったのは調理が必要な物ばっかりだったわよ?
先に言っておくけど、私に料理は期待しないで頂戴。』



残念ながらアリッサの言う通り、此所にあったのは温めれば食べられる様なレトルトや冷凍食品ではなく、それなりな調理が必要な物ばかりであったのだ。

問題は誰が料理をするのか、だ。

こんな状況なので贅沢は言わないが、せめてまともに食べられる料理が欲しい。

因みに、ジョージもまた料理に自信は無い。


この中で料理が出来そうなのは………シンディと言い出しっぺのユイだろうか。
内心ジョージがそう思っていると。





『と、いう訳だから、ハルが作ってね。私も食材を切る位なら手伝うから。』


ユイはニコリと笑って意外な事にハルを指名した。




4/15


戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -