「また行き止まり!? 何でまたこんなに道が塞がってるのよ!!」 見知らぬ土地故に土地勘もなく、取り敢えずゾンビ達から逃げようとした結衣の行く手を阻んだのは、あちこちで起きている火事やら周囲の建造物の崩落で塞がれた道そのものだった。 幾ら結衣がゾンビ達に気付かれない様に、奴等の注意の隙を縫うように動いていても、肝心の道がこれではどうしようもない。 大分知能の面で残念な事になっているゾンビ達だが、獲物である結衣への執着は常軌を逸するもので、着々と結衣を追い詰めていく。 武器もない、徒手空拳の結衣には逃げるしか出来ない。 「確かに、数で押すのがゾンビ映画の醍醐味だけどね。 実践されるのは遠慮したいわ。」 ゆっくりと狭まってくるゾンビ達の包囲網の隙間を何とか掻い潜っていくも……。 (これは……大分不味いわね。) どんどんと細い道に追い詰められていく。 このままでは行き止まりだ。 三方を高い壁に囲まれた袋小路……。 周囲の建物は大火災の真っ最中らしく、まぁ逃げ込のは自殺行為だろう。 ゾンビ達のご飯にされるか、火事で火だるまになるか……。 (ま、どっちも願い下げだわ。) 絶体絶命な状況だが、敢えて結衣は不敵に笑った。 結衣は武器を持ってはいない。 だが、知恵と機転と判断力は備わっている。 結衣は道の行き止まりに大量の工事用の太い鉄パイプが積み上げられているのを見逃してはいなかった。 そして、この道が微かに行き止まりに向かって上り坂になっている事も。 鉄パイプを止めているロープは飛び火したのか真っ黒に炭化して、大分脆くなっていた。 手でも引き切れる可能性は十分ある。 「本来、こういうのは凛やハルの得意分野なんだけどね。」 結衣はそうぼやきながらも、鉄パイプの山の上を駆け登った。 周囲の火に炙られて、鉄パイプ自体がかなりの熱を持っている。 手が痛くなるのには構わず、結衣は鉄パイプを縛る炭化したロープを掴む。 全力で引っ張ると、ロープは音を立てて千切れる。 「これでも、喰らいなさい!!」 それから結衣は鉄パイプの山を思いっきり蹴り崩した。 崩れた鉄パイプはゾンビ達を引き潰し、更には坂道を転がって後続のゾンビ達をも薙ぎ倒していく。 再び囲まれる前に、結衣は散乱する鉄パイプの上を走ってその場を脱出した。 |