![]() そもそもこの事態の根本的な原因は凡その体感時間で数時間前、俺は《見知らぬ》街の片隅で目を覚ました事に端を発していた。 目覚めた時にはそりゃ混乱したし、焦った。 まさに「ここは何処?私は誰?」的な状況だったのだから。 ま、幸い俺の記憶はそこで目覚める迄の記憶はしっかりあったのだけれど。 目覚める直前にいた筈の月代の家ではないし、勿論俺の家でもない見たこともないしましてや来た覚えなどない廃屋の中で俺は若干途方に暮れていた。 そして何気無く窓の外を見て………。 取り敢えず俺は後悔した。 一瞬意識が飛んだかもしれない。 そのまま気絶しなかっただけ、自分を誉めてやりたい気分である。 それ程衝撃的な光景が窓の外には広がっていたのだ。 さて、話は変わるのだが、《ゾンビ》という物をご存知だろうか。 《ゾンビ》を題材にした…《ゾンビ》が登場する“創作物”は小説、アニメ、漫画、ゲーム、映画と…古今東西何処にだって溢れているのだから、少なくとも誰もが何となくは知っているだろう。 簡潔に説明するならば、動き回る死体である。 死体……でなくても、腐った感じの体で動いていたら《ゾンビ》カテゴリに入れていい気がする。 と、まぁ何で突然ゾンビの話をしたのかというと。 窓の外に何処からどう見ても《ゾンビ》としか表現出来ない連中がウジャウジャいたからだ。 取り敢えず頬を思いっきりつねってみたのだが、ただ単に頬が痛くなっただけだった。 この段階で俺の頭には疑問符が溢れかえっていた。 1.ここは何処? 2.どうしてここにいる? 3.どうやってここまで来たのか。 4.これからどうするべきか。 5.このゾンビの様な連中は一体?←New! ………等と呑気に考えている場合ではない。 《ゾンビ》?の登場により、俺がとんでもない命の危機に晒されているのだと気付いたからだ。 古今東西の《ゾンビ》は、多少の設定の差こそあれど、人間を襲うのだけは共通している。 廃屋に籠城する………という手が無くもないのだが、籠城した所で何処からともなくヒーローがやってきて救出してくれるだなんて超ご都合主義的展開は有り得ないだろう。 そんな物を期待する程、頭がお花畑状態ではないからだ。 《ゾンビ》が諦める、なんて事はない。 万が一そういう事があるのだとしても、物資もなく補給など有り得ない現状ではその前に俺の方が干上がる。 そもそも、この廃屋はそんなに長時間は持たない。 籠城は明らかに現実的な策ではない。 ならば何をすべきか。 先人達は実に素晴らしく分かりやすい言葉を遺してくれている。 《三十六計逃げるに如かず》。 俺は、あんな大群相手に切った張ったが出来る様な超人じゃない。 根性で一人位は何とかなるかもしれないが、まぁ囲まれてお陀仏、というのが目に見えている。 ならば、生き延びる為に俺に出来る事それは、逃げる事、である。 と、いう訳で俺は廃屋を飛び出し、逃げた。 脇目も振らず、持てる知識を総動員して《ゾンビ》達と命懸けの鬼ごっこを始めたのであった。 逃げ回る内に、この街が何処と無く見覚えがある場所なのだと気付いた…………それも、ゲームの中で。 いや、まさか、そんな、と戸惑う一方で、心の何処かでは納得していた。 そう、ここは《バイオハザード》の世界。 それも、ウイルスパンデミック真っ只中の《ラクーンシティ》なのだ、と。 何でまたそんな突拍子も無く非現実的な事態になっているのから分からないけれど…………。 ここがあの《ラクーンシティ》なのだとすれば、助かる方法は無くはないのだ。 同じホラゲーカテゴリのSIRENシリーズの《羽生蛇村》や《夜見島》に放り出された訳ではない分まだ希望が持てなくもない。 ![]() |