★ 凜がヨーコ達を追い掛けて屋上に辿り着いた時には、もうボブは限界を迎えていた。 ヨーコ達は先に行った様で、屋上にはマークとボブ、そして凜とケビンしか居なかった。 ボブはマークと何事か言葉を交わし、ハンドガンを手に取る。 ゲームの中の、あるイベントシーンそのままに。 『あいつらと同じなんだ……。 ……マーク……俺は……お前を……。』 そのままボブは手にしていたハンドガンをこめかみに当てようとした。 その先の光景がフラッシュバックしてしまった凜は堪えきれずにボブに走りよってその手を掴む。 「……駄目……だ!……死なないでくれ……! ……頼む……!!」 ボブがもうすぐでゾンビになってしまうのは分かっていた。 現時点ではボブを救えないことも、ボブがゾンビと化す前に自殺を望んでいることも、分かっていた。 止めた所で何の解決にもならないことを承知の上で、止めずにはいられなかった。 凜の必死の懇願にボブは、ゾンビと化していく中で表情が乏しくなっていても、驚いているのだとはっきり分かる表情を浮かべ、そしてぎこちなく微笑んだ。 『……ありがとう……優しい……お嬢さん…。 …あんたのお陰で……ここまで来れた。 ……感謝しているよ…。だから、……死なせて……くれ。 ……あんた達を……食べたく……なる前に……。 俺が……俺で……居られる内に……。』 『ボブ……!』 『ボブ…あんた……。』 ケビンが何かを察したが、言い澱む。 『マーク……それと、…ケビン…だったか……。 ……このお嬢さんを……頼む…。』 ボブの言葉にケビンは頷いた。その直後。 「!っ、ケビン、止めろ…! 止めてくれ…!!」 凜はケビンに後ろから羽交い締めにされ、目を塞がれた。 今から何が起きようとしているのかを察した凜は、その拘束を逃れようとケビンの腕を引き剥がそうとする。 『いや、……駄目だ。離すわけにはいかない……!』 だがケビンが頑として拘束を緩めなかった。 そして。 ケビンの手に塞がれ何も見えない世界に、一発の銃声が響き、何か重い物が倒れる音がした。 |