世界を変える願い事





「…よし。」


ウィルやケビンがどんなに体当たりしても壊れなかったシャッターをリンはいとも簡単に蹴破ったのだった。

一体どんな怪力をしているのだろう。

最早驚くことすら忘れてしまいそうだ。

そのケビンよりも高い身長や、全然無い胸といい、全く女の子には見えない。
そもそも高校生にすら見えなかった。


それにしても、リンは迷いなく進んでいく。
時折立ち止まって辺りを見回す事があるが、それは何かを警戒しての事だった。


「ヨーコ…!もうすぐ奴等が追い付いてくる…!…急ごう…!」

リンが何事かをヨーコに警告した直後。
ガラスが割れる音が響き、ゾンビが窓から入ってきた。
一気に3体が侵入してくる。


「くそっ!こんなに早いなんて…!」

リンはボブをマークに預け、侵入してきたゾンビと対峙した。

「ここは私が食い止めるから早く屋上へ!!」

ヨーコは戸惑いながらも頷き、先へ進んだ。


『おい!一人では危険だ!』


リンの意図を察し、ケビンも戦おうと45オートを抜く。

しかしケビンが発砲するよりも早くリンはゾンビに走りより、そのままの勢いで一体の頭を蹴り砕き、更に回し蹴りで2体を窓の外へ蹴り飛ばした。



『……俺の出る幕なんて無いってか?』

思わずそう呟いてしまうほど、リンは鮮やかにゾンビを倒してしまった。


「よし、これで……。」

ヨーコ達を追い掛けようとリンが窓に背を向けたその時。
ケビンはゾンビが窓から再び侵入して来ようとしているのに気が付いた。

『リン!!動くな!!』

リンに警告すると同時に発砲し、リンの背後にいたゾンビを過たず撃ち抜いた。

リンは後ろを振り返り、額を撃ち抜かれたゾンビが床に倒れるのを見た。


『少しは後ろも警戒しとけよ?熱心なファンに襲われちまうぜ?』

通じないと分かっていながらもケビンが軽いジョークを飛ばすと。


「えっと…『ありがとう。』」


ケビンが助けてくれたのを理解したのか、リンは辿々しく礼を述べて微笑んだ。

店内からずっと凜とした表情を崩さなかったリンが、初めて見せた年相応の笑顔はとても魅力的なものだった。

もしケビンがもっと若く、更にはリンの胸がもう少しあったらクラッときていたかもしれない。

『リンもそういう顔してたら女っぽく見えるぜ。』

「?」

リンには伝わらなかった様で、怪訝な顔をされるだけだった。




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