世界を変える願い事



そうこうしている間にバリケードが破られそうになってきている。
ウィルが鍵を持っていたようで、業務員用の扉から抜けて屋上を目指すことになった。


「大丈夫か…?……しっかりするんだ。」

ウィルとケビンが先行して道を開いていく中で、凜はマークと一緒にいたボブを気付う。

肩を貸し、頻りに声を掛けた。
気休め程度にしかならないのは凜も分かっている。

恐らくここにいる誰よりも……もしかしたらボブ自身よりも、凜はボブの身に何が起きているのか、これからボブがどうなってしまうのかを理解していた。
そして現状ではそれをどうする事も出来ない、という事も……。

それでも自分が声を掛け続けていることで、少しでも長く彼が意識を保ってくれれば、と淡い希望を凜は抱かずにはいられなかった。

『あ、あぁ。……すまない…な。』

『本当に大丈夫なのか?……顔色が悪いぞ…?』

心配そうにマークがボブを見やった。
ボブが既に手の施しようが無くなっていっているのは、肩にまわしている腕が死人の様に冷たくなっていっていることで、凜は気付いてしまっている。
……凜は…、何も言えず自身の無力を噛み締める事しか出来なかった


通路を抜けていると、酒倉庫に出た。

「ここは……。酒倉庫…か。」

辺りに充満するアルコールの匂いをかいで、ふと頭にあることが過った。

そして辺りにある酒のラベルを確認していき、アルコール度数と思わしき数値が特に高そうな物を選んでは片っ端からリュックの中に仕舞っておく。
落ちていた新聞紙も忘れずに拾って置いた。


更に先へ進もうとしていると、ウィルが何やらもたついている。

『くそ、鍵が開かない…!壊れているのか?』

どうやらウィルが持っている鍵では酒倉庫のシャッターは開けられないらしい。

ケビンがハンドガンで壊そうとするが、後に待つ事態を思うと、無駄弾は使うべきではないだろう。
傍にはキーが抜かれたフォークリフトがあり、それを使ってこのシャッターを開ける方法を凜は知っていた。
だが。
今は一々キーを探す手間も惜しい。


「ケビン。私が壊すから、退いててくれ。」


だから、ケビンに退いてもらってから凜はシャッターを蹴破った。




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