君の冷たい右手を

「(寒い……)」


調査のためにリノルへやって来た與儀、花礫、ツクモ、无は一面を雪の覆われた場に立ち尽くしていた。

前回、火不火に遭遇しツクモが連れ去られるなどの事件があったため不十分だった調査をもう一度行いたいと上からの命令で前回と同じメンバーで調査を行う事になった。


花礫は自身に出来る事は何かを考えている所を無理やり連れてこられたので、不機嫌なまま調査に臨んでいた。

そして、前回よりも天候が良くなく、季節的にも寒くなっているため、无は先ほどからユッキンを手放さない。


「おい、俺にもそいつ寄こせ 」

「花礫もユッキン欲しいの? でも…俺寒いから渡したくない 」

「花礫君、无君に譲ってあげて? 私のカイロあげるから 」

「……」


先ほどから手先が異様に冷えており少しだけ温まりたかっただけなのにツクモからしょうがないなこの子はとでも言いたげな視線を受け、カイロを与えられそうになり、花礫は慌てて弁解した。


「い、いらねーし。 ちょっと手が冷えてると思っただけだ。 そんなもんいらねーよ 」

「あら、そう? 」

「花礫大丈夫? 」

「おう 」


花礫は少しでも手先を温めようと、手袋を外して手に息を吹きかけた。


そんな彼を先ほどからじっと見つめる人物が居た。

彼らの会話を聞きながらも会話には参加せず、じっと何かのタイミングを計っている男、與儀である。


與儀は花礫が息を吹きかけるのを止めて手袋をし直そうとした時に、今だ!とばかりに彼の横へ移動した。


「花礫くん!! 手!! 」

「は? 手? 」

「うん! ほら、どうぞ! ここ 」

「………は、はあ? な、何言ってんだ!! バッカじゃねーの 」

「ほら、もうっ! 早くおいでよ〜 えいっ!! 」

「うわぁ!? 」


與儀は花礫が手袋をしようとした手を指差して自身のコートのポケットを開いていた。

花礫は與儀がしようとしている事を理解してしまい、顔を赤くして拒否した。

しかし、與儀はしつこく花礫に迫り、しまいには花礫の右手を掴み無理やりポケットの中にお招きした。


そして、自分も左手を花礫の右手があるポケットにしまいこんで、ギュッと手を繋いだ。


「お、おい!! 」

「いーじゃない。 恋人達の冬の恒例行事だってば! 花礫くん、本当に手先冷たいね。 俺が頑張って温めてあげるからね!! 」


與儀に笑顔で押し切られてしまい、花礫は恥ずかしいが、指先が温かいし與儀と手を繋ぐなど普段は恥ずかしくて出来ないので、少し嬉しいと思った。そして、仕方がないという雰囲気を出しながら、與儀の手をギュッと強く握り返した。


「ふんっ。 お前がどうしてもって言うんなら仕方がねーな。 しばらくこのままでいてやるよ 」

「本当? ありがとう! 花礫くん 」


わーいと喜ぶ與儀の顔を見て、花礫もふっと幸せそうに笑った。



(花礫くん、私達が居る事忘れてる…でも、幸せそうね。 もうちょっとこのままにしておきましょう)


幸せオーラ全開な二人を見て、ツクモはこう思い、无の手を引き彼らから少し離れた場所に移動した。






花礫が調査の事を思い出すのはあと数分後…………?







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