祝って祝って?

ジーー

「っ、何だよ?」
「…………」

ジーー

「いい加減にしろよ!! なんか用があるんだったら言え!」
「……………」
「おいっ!キイチ!!」

貳號艇の談話室、そこで朝からゆったりと読書をしていた花礫は突如現れた壱組の少女、キイチに戸惑っていた。

彼女はただひたすら無言で花礫を見つめていた。
何度呼びかけても返事がなく、目で何かを訴えているようである。

(何だよ…俺の顔になんかついてるのか? つか、與儀かツクモ!早く来い!!)

キイチが貳號艇に来る時は必ず会いに来る二人がまだ来ない事に花礫は理不尽にも怒りを感じていた。


キイチの訳のわからない行動を解明出来る者はこの場にはいなかった。

彼女が来てから三十分が経とうとした時、彼女はやっと口を開いた。


「花礫さん……今日、何の日かご存知ですか? 」
「は? 今日……?」
「貴方はキイチと唯一の同い年ですぅ。 昔っからキイチ出来が良かったから年上しか知り合いがいなかったです 」
「はあ……??」

キイチは口を開いたと思ったら意味のわからない事を話し出した。
花礫はただ彼女の言葉を聞くことしか出来なかった。

「だから………花礫さんを一番にしてあげるですぅ。 キイチそのために朝から誰にも会わずに来ました 」
「えっ、だから何言ってんの? え? お前誕生日かなんかか? 」

花礫はキイチの言葉から推測して彼女に尋ねた。

するとキイチは花が咲くような笑顔を見せて年相応にうなずいた。

「はい!! 」
「(ちゃんと言えよな……分かるかよ!)まあ、なんだ………………おめでと 」
「ありがとうございますぅ!! 流石キイチの同級生ですぅ!!! 」
「同級生って……年が一緒なだけだろ 」
「良いんです! 貴方はキイチの親友です! 一番におめでとうを言ってくれましたし!! 」
「あー、はいはい。 そうだな」


花礫はキイチがあまりにも嬉しそうにしているのでなんだか自分まで彼女の親友になるのは悪くないと思い始めていた。

そして彼女の頭を軽く撫でると、手に持っていた本をおもむろに部屋のドア付近に投げつけた。


「ギャッ!?」
「え?」

キイチは花礫の行動に驚き声のした方に振り向いた。

そこに居たのは………

「與儀さん!?」
「イタタタッ 花礫くん酷い!!」
「うるさい。 なにコソコソしてんだよ? うぜーんだよさっさと出てこいよ」

どうやら與儀はドアの影に隠れて花礫達を見ていたようで、それに気付いた花礫は自分たちのやり取りを見られた恥ずかしさからか、與儀にキツく当たっていた。

「だいたいいつから居たんだよ!! 俺がコイツの意図が分かんなくて困ってる時から居たとか言うなよ? 」
「花礫さん酷いですぅ。 それに與儀さんはたぶん最初から居ると思いますよ? キイチがこの部屋に来た時には居たと思います 」
「へぇー 」

花礫はキイチからその事を聞くと與儀を睨みつけた。

怒りで與儀を睨みつけている花礫と睨まれて涙目になっている與儀。
まるで蛇に睨まれた蛙のようだ。

そんな二人を見てキイチはプッと吹き出すと一気に笑い出した。

「アハハハッ お二人は仲良しさんですね。 フフッ でも花礫さんの親友の座は渡しませんよ! これからお買い物行くんですからね!!ね? 花礫さん! 」
「え゛…… 」
「えー、いーなー! 俺もお買い物行きたい!! ね、一緒に行っても良い? 」
「ダメですぅ。 今日は二人で行くんです! もっと親交を深めないとです 」

そう言いキイチは花礫の腕をとり外へ連れ出すように引っ張った。

花礫は彼女の勝手に驚いたが、誕生日である彼女に少しのお祝いの気持ちがあったため、大人しくついて行くことにした。

キイチに握られた手が想像以上に小さく、こんな小さな手で、身体で、輪に入って戦っていると改めて実感し、つい普段なら言わない言葉を放ってしまつた。


「いつもお疲れ。 来年もちゃんと祝ってやるからそう焦るなよ。 おめでとう 」
「ガ、花礫さん!? あ、の……と、当然ですわ!来年はちゃんと貴方はから会いに来てくださいね! 」
「おー。 努力する 」

そう言い花礫はキイチの頭を撫でて、彼女との買い物に出向いた。





Happy Birthday


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