Happy Birthday HIRATO

平无
10月22日。静かな朝を平門は迎えていた。
数分前までは。

「平門さん! おはよう!!」
「……无。 悪いが、降りてくれないか?」
「あっ、ごめんなさい……」

何者かの気配がし、目を覚まそうと想ったら、腹部に重みを感じ、平門は目を開けた。
そこに居たのは、自身の腹に跨って挨拶をする无だった。
取り敢えず、重いので降りてもらうと、无は思い出したかのように小さな箱を取り出した。

「あのね、平門さん。お誕生日おめでとう! これね、俺が大好きなお菓子だよ! 羊さんに買ってきてもらったんだ!」
「……そうか、今日は22日か。 ありがとう、无。 後で食べるよ」
「 うん! 良かったー」

无は平門に礼を言われ、嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔を見て、平門はニヤリと意地の悪い笑みを見せた。

「无、お礼がまだだったね」
「へっ?」

ちゅっ

平門は无のほっぺにキスをした。
突然の事で、茫然としていたが、しばらくすると復活して頬を手で押さえて恥ずかしがった。

「か、嘉禄が言ってた。キスは好きな人としかしちゃダメなんだよ!」
「ふふっ。 だからしたんじゃないか。 无、可愛いね」
「びゃっ!?」

平門は无を抱き上げると再び布団に潜り込もうとした。


その時

「无を離せ! このケダモノ!!!!」











平嘉


「无を離せ! このケダモノ!!!!」

そう言い、平門の部屋に飛び込んできたのは、貳號艇に保護された嘉禄であった。
彼は、无を弟の様に時には息子のように可愛がっており常に无の事を考えていた。
本日も、无が平門の誕生日を祝うと言っていたので心配になりこっそり着いてきたのだ。


「嘉禄!」
「无!こっちおいで! 早くその変態からはなれるんだ!」

嘉禄は平門に抱き上げられている无を奪いとり自身の腕の中に招き入れた。

「変態とは酷いな。これでも无のことは保護者として可愛がってきたんだが?」
「保護者はそんなことしない!キ、キスなんて…」

嘉禄は顔を赤くして平門に抗議した。
无はかつてないほどに嘉禄が取り乱しているので不思議そうに彼を見つめていた。

「なんだ。 して欲しかったのか? しょうがないな」
「なっ!?何言っ…んんっ!?」
「あっ……」

平門は意地悪く笑うと嘉禄の顎に指をかけクイと上を向かせて唇にキスをした。

「………………」
「……嘉禄? だ、大丈夫?」
「ふふっ。今日は俺の誕生日だからな。プレゼントをいただいたよ」
そう言い残し平門は部屋を出ていった。


(ぼ、僕のファーストキスが……)

无の為にとっておいたファーストキスを奪われ放心状態の嘉禄は无を腕に抱いたまましばらく動くことはなかった。











平ツク




「平門っ!」

嘉禄をからかったあと、朝食を食べようと歩いていると可愛らしい声に呼び止められた。
誰か分かっているので、優しい笑顔を浮かべて振り返ると、そこには何やら怪しい物体をトレーに乗せて持っているツクモがいた。

「ツクモ……………おはよう」
「おはよう、平門。 あの…お誕生、おめでとう」
「ああ。ありがとう。では俺は急いでるから」

平門は身の危険を感じ、すぐさま逃げようとしたが、ツクモは素早く彼の前までやって来てトレーを差し出した。

「これ……プレゼント! あの、その……ちょっと見た目は悪いけど、大丈夫。喰君が味見してくれたから」
「(悪いがアイツは信用出来ない)そうか…ありがとう。あとでいただくよ」

平門は笑顔でトレーを受け取ろうとしたが、ツクモはサッとトレーを自分の方へ引き戻した。

「嫌。今ここで食べて。  今ここで」
「やっ、その……」
「大丈夫だから。      食べて?」

ツクモの押しに負けて仕方がなく平門は怪しい物体に手をつけた。

「ん…………………美味しいよ」
「良かった。平門、これからもよろしくね?  」

本当は味はそんなにしなかったが、食べられない程ではなかったので美味しいと伝えた平門。
ツクモは笑顔で喜び、平門にお辞儀をしてから去っていった。


(取り敢えず、味見をした喰は後でお仕置きだな………)


気を取り直して平門は朝食を食べに向かった。






平イヴァ



朝食を済ませて(お口直し)本日は時辰からの無駄な計らいで休日となっているので、自室でゆっくりと本を読むことにした平門。
部屋への扉を開けようと手を伸ばした時、部屋の中に人の気配を感じた。
(誰だ……? 朔か?)

平門の部屋へ勝手に入る人物は限られており、中でも同期の朔が一番可能性が高い。
平門はまた何か厄介なことになるのではないかと思いながらも、他に行き場所もないため、ため息を一つ吐いてからドアを開けた。

「平門! 遅かったじゃない!!」
「なっ!?  イヴァ」

部屋に入るとそこに待ち受けていたのは、朔ではなく自分の部下であるイヴァであった。
しかし、それだけなら問題ないのだが……

「おまっ、なんて恰好してるんだ!?」
「あら? お気に召さない? せっかく誕生日だからサービスしたのに」
「サービスって……とにかくさっさと服を着ろ!!」

イヴァの恰好は、下着…ではなく水着だった。しかし、面積は少なく彼女の素晴らしいボディが惜しげもなくさらされていた。

「おっかしいな〜。 男はこういうの好きなんじゃないの? アンタの兄貴が秘書にさせてたって燭先生が言ってたわよ? 同じ遺伝子だったらアンタも好きだと思ったんだけどな〜??」
「(燭さん……今晩覚えててください)俺をアイツと一緒にしないでくれ。 分かったらさっさと服を着なさい」

そう言い平門は自身のジャケットをイヴァへ投げつけた。

「もうっ。つまんない男ねー」

イヴァはむくれながらも彼から渡されたジャケットを羽織り、脱いでいたスカートを身に着けた。
平門は少し馬鹿にされた気がしてムッとしたが、すぐに何かを思いついたような顔をし、彼女に近づいた。

「俺はね、自分で脱がしていく方が好みなんだよ」
「っ!?」

スルッと自分が貸したジャケットを肩からずらしながら耳元で話されたため、イヴァはビクリと肩を震わし顔を真っ赤に染め上げた。

「ななっ、なに言ってんのよ!! も、もうっ帰る!!」

素早くジャケットを羽織り直しイヴァは一目散に部屋から出て行った。

「ふぅ。 あの子もまだまだイジリ甲斐があるな」

平門はニヤリと笑い、一人残された部屋で呟いた。








平花+與儀(與花)




イヴァを部屋から追い出すことに成功し、やっとゆっくり読書をしていると、コンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。
ここは無視したいところだが、どうせまた誕生日の事だろうと思い、すぐに追い出すつもりで平門は返事をした。

「どうぞ」
「じゃまするぞ」

返事と共にドアが開き、入って来たのは平門が貸した本を腕に抱いた花礫だった。

「本、返しに来た。 他の本もちょっと見せろ」
「あ、ああ。 良いぞ。 好きなのを持って行け」

また誕生日のお祝いだと思っていた平門だが、花礫はただ本を返しに来ただけなようで、平門は一瞬反応が遅れたしまった。
煩わしいと思っても、いざ祝われないとなれば何かが面白くないと感じた平門。
真剣に本を吟味している花礫を見て、可愛らしくうずくまって本を漁っている彼を見て、悪戯をしたくなった。

(可愛い子ほどイジメたくなるものだな)

平門はすぐさま花礫の背後に立ち、彼の脇の下に腕を入れて、抱き上げた。

「うわっ!? 」

花礫は突然の事に驚き持っていた本を落としてしまった。
そして、自分の置かれている状況を把握すると足をバタつかせて激しく抵抗し始めた。

「おいっ! クソ眼鏡! 離しやがれ!!!」
「ふふっ。 花礫、今日は何の日か知ってるかい?」
「は? なんだよ? 知るわけねーだろ!! 離せっ!」
「ほう 」

平門は花礫を抱き上げたまま歩き出し、今日は何の日かを問うたが、花礫は知らなかった。
こんなに皆が騒いでいたのに知らなかった。
どこかが面白くないと感じた。

(この子はホントに他人に興味がないな…)

花礫は平門に反論しようと彼の方を振り返ったと同時に、ボフンと柔らかいベッドに投げ落とされた。

「っ!?」
「花礫、お前はもっと周りを良く見なさい。  今日は俺の誕生日だよ」
「……はあ? そんなのどーでもいーじゃねーか。 何でアンタの誕生日を知らなきゃなんねーんだよ!」
「それはどうかな? 俺はお前たちを保護して面倒を見ている。 言わば保護者だ。 保護者の誕生日も知らない子供がいるかな?」
 

平門は妖しく笑うと花礫の手首を一纏めにし、片手で押さえつけた。
花礫は抵抗したが、腕はピクリとも動かなかった。

「ななな、なにする気だよ……?」
「…そうだなー。お前らが普段してることでもするか? 俺の方が上手いぞ?」
「えっ、ちょっ!? やっ、何してっ 」
「お前が祝ってくれないからな。 勝手にプレゼントをもらうことにしたよ」

平門は花礫の服の中に手を入れ直接肌を撫でまわした。

「やっ、やめっ…んっ」
「花礫…」
「やぁっ…」

平門に耳元で囁かれ、花礫はひどく反応した。

「なんだ。耳が弱いのか? 可愛いな」
「ふゃん…ヤダ…舐めっ、な…」
「ん? どうした?」

平門は面白がって花礫の耳を攻め立てた。
花礫はビクリと体を震わし、良い反応を見せる。

(ちょっとからかうつもりだったが……なかなか良いものだな)

花礫の反応に気を良くした平門は、胸を触っていた手を今度は下腹部へ持って行った。

「嫌だと言う割には反応してるんだが?」
「なっ、違ッ 」
「違わないだろう?」

反応した花礫自身を布越しに刺激し、花礫の反応を楽しむと、平門は彼のベルトに手を掛けズボンをずらそうとした

その時である。



「ヤダ―――――――――!!!!!! 花礫くんを離して――――――!!!!!!」

少しだけ開いていた寝室のドアを乱暴に開け、與儀が泣きながら入ってきた。

「よ…ぎ…」
「花礫くん!! い、今助けるからね!!」
「與儀か。 ずっと俺たちを見ていたのにか?」
「えっ?」
「みみ、見てないですよ! ちょっといつもと違う花礫くんが可愛いとか思ってないです!」

與儀は平門に花礫が襲われている所を覗き見ていた事を指摘され、否定したが、墓穴を物凄い勢いで掘っていた。
花礫からは冷たい視線を向けられ、平門からは呆れた視線を向けられていた。

「與儀………死ねよ」
「花礫くん!? えっ、ええ!? 俺、助けに来たのに 」
「ははっ。 與儀はそこで大人しく見てて良いぞ? 花礫が乱れる所を」
「―ッ!? や、んん…」

くつろげられたズボンの間から手を入れ平門は花礫自身を直接刺激した。
平門はニヤリと笑い、花礫を弄りながら與儀を見た。
その一瞬の隙を突き、花礫は平門へ頭突きを食わらせた。

「っ!?」
「痛っ。 この石頭が! 死ね!!」

花礫は顔を真っ赤にし、乱れた服のままベッドから脱出し、寝室を出ようとした。
しかし、ピタリと動きを止めると、振り返って、ボソッと平門に言い放った。

「……まあ、誕生日は祝ってやらなくもない。    おめでと  」

言い終えると花礫はさっさと部屋から走り出て行った。

「はははっ。 なかなか可愛い事をしてくれるじゃないか。 なあ、與儀?」
「……花礫くん」

與儀は花礫が無事に脱出したことに安心したが、あんなに可愛い姿を平門に見られてしまいショックを隠せないでいた。

(花礫くんは俺のなのに……花礫くんも満更でもない感じだった……)

「與儀 」
「ふぇあ?」
「お前は何かないのかい? それとも花礫を触らせてくれたことがプレゼントかい?」

平門は呆けている與儀に意地悪く話しかけた。

「なっ、違います!! 俺は、ちゃんと用意したから!!! が、花礫くんをアンタに触らせるなんかするわけないでしょ!!」
「実際、触ったがな。  良い反応をするように躾けたじゃないか。 お前にしたら上出来なんじゃないか?」
「なっ……平門さん!!ふざけないでください! 今度彼に手を出したらアンタでも許さないから!!」

そう言い與儀は、細長いラッピングされた箱を平門へ投げつけ、花礫を追って部屋を出て行った。

「本当にからかい甲斐のある二人だな。  おっ、眼鏡ケースか」

平門は與儀から貰った箱を開け密かに喜んだ。

(今度與儀と花礫を二人で街にでも行かせてやるか…)








[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -