嬉し、恥ずかし、誕生日
誕生日なんて、ただ自分が生まれたってだけでただの一日ですよ。
今年、壱號艇に配属になった喰はこう言った。
今まで誕生日だからと何か特別な事をしてもらったことがないそうだ。
俺はコイツの教育係として、まず、人から祝われる喜びを教えなければいけないのかと、頭が痛くなった。
「朔さん?どうしたんですか??」
「いや、何でもない……」
そんな本日は、コイツの誕生日らしい。
コイツ、俺が聞かなかったら一生黙ってたな……。
さてと、可愛い後輩の生誕を祝いますか。
そうと決まれば話は早い。
兎に連絡して…あ、貳號艇にも連絡するか!
與儀は喰と年も近いしな!
盛大に祝ってやるから覚悟しろよ?喰。
**
「「「「喰くん、お誕生日おめでとう(ございますぅ)」」」」
「……おめでとさん」
10月3日の貳號艇にて、いつものように起床し、朝食をとりに行こうと部屋に入ると、クラッカーとともに、祝いの言葉を掛けられた。
「……あ、今日誕生日か、僕」
「あ、じゃないですぅ!!もっと喜んでください!!」
「飾りつけは私とキイチちゃんと无くんでしたの。キイチちゃん、とても楽しみにしてたのよ」
「喰くん!おめでとう!!毎年だけど、生まれてきてくれてありがとう」
貳號艇メンバー+キイチに祝われて、少し頬を紅くし照れる喰。
「ありがとう」
喰はハニカミながら礼を述べた。
そして部屋の中を誰かを探してるかのように見回した。
それを見た花礫は、誰を探しているのかを察し、こっそり喰へ知らせた。
「朔なら、今、任務中だ。速攻で終わらせてくるってよ」
「なっ、別に僕は……」
「本当は毎年のようにしたかったんだとよ。毎年何してたんだ?」
「え、それは……」
朔からの伝言を喰に伝えた花礫だが、その内容が気になったため喰へ尋ねる。
口ごもる喰を見て、話を聞いていた與儀が代わりに答えた。
「喰くんの誕生日にね、朔さんは喰くんをすごーく甘やかすんだ!ここ数年は移動するのも朔さんが抱き抱えて運んでたんだよ!初めて喰くんをお祝いした時にね、喰くん、嬉し泣きしたからそれからずっと朔さんは喰くんを喜ばせようと毎年工夫してるんだよ〜」
愛を感じるよねー!
與儀は喰の事を話終えると、无たちのもとへ行き、喰へのプレゼントを運び始めた。
「……愛されてんな、お前」
「………もう、ほっといて……恥ずかしくて死にそう」
「でも、嬉しいんだろ?」
「当たり前じゃない!嬉しいよ。でも、毎年大袈裟なんだよ……」
喰は顔を手で覆い、恥ずかしがったが、声は明るく、喜んでいることが分かる。
花礫はニヤリと笑いながら、喰の肩に手を置き、朔からの伝言の続きを発した。
『今日の夜は絶対に空けとけよ?誕生日最後の瞬間は俺と一緒だ』
「は?あ、あの人なに言ってんの!?てか、花礫くんになに言わすの!!」
「俺は別に気にしないぜ。お幸せにな」
そう言い花礫は與儀達の元へ歩いていった。
喰は顔を真っ赤にし、今夜の事を考えた。
(ふざけるな!朔さん……早く帰ってこいよ!!ぶん殴ってやる////)
喰の誕生日会は朔が帰ってくるまで続いた。
Happy Birthday 喰
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