花礫くんと!!!

艇に戻り、お風呂に入った花礫は、現在、ツクモが大量購入していた服を着ている。服にこだわりはないが、可愛らしいものがほとんどであり、この服を着てどこかへ出掛けたいとは思わず、昼間の事もあり、大人しく本を読むことにした。

しかし、小さな身体では体力が余り無いため、もう眠くなってしまい、本を読みながらもかくんかくんと船を漕いでいる。

「花礫くん。もう寝ましょう?」

ツクモが眠そうな花礫に話しかけるが

「嫌だ。まだ6時だぞ?早すぎるだろ」

身体は眠そうだが、心がまだ寝れないと訴えており寝ることを拒否する。

「でも、我慢は良くないわ」
「嫌だ」

そんなやり取りを行っている所に

「たっだいまー!!ツクモー帰ったわよ!キイチも一緒なの」

イヴァとキイチがやって来た。

「イヴァお帰りなさい。キイチちゃんもいらっしゃい」
「こんにちはです。……あら?そちらの男の子は誰ですか?」
「あら!ほんと!!可愛いわぁ!お名前は?」

イヴァに抱き抱えられて不機嫌になる花礫をおろおろと見守るツクモ。

「イ、イヴァ。その子、花礫くんなの。能力者の影響みたいで……」
「「え?」」
「早く下ろせよ」

シタバタ暴れる花礫だが、イヴァは抱き締めたまま固まっている。

「イヴァ?」
「おい!どうしたんだ?」

ツクモと花礫が心配になり話しかけると、ギューっと花礫を強く抱き締めた。

「っ!?」
「可愛すぎるわー!あんた最高ね」

この服も可愛い〜!頬擦りしながら話し出すイヴァに鳥肌が立ち恐怖を顔に出す花礫。それを見かねてキイチがイヴァと花礫を引き離した。

「イヴァさん!花礫くんが怖がってますです!ここはキイチが抱っこします」

嬉しそうに花礫を優しく抱き抱えるキイチを見て、イヴァとツクモは文句は言えなかった。

((微笑ましい))

「所であんた達、あたし達が来るまで何を言い争ってたの?」

部屋の外まで声が聞こえてたわよ?
珍しくツクモが大きな声で話していたので気になっていたことを質問する。

「別にたいしたことじゃ「花礫くんが眠そうなのに寝ないから、寝ましょうって言ってたの」っおい!」

面倒なことになりそうだから、理由を言いたくなかった花礫だが、ツクモが被せるように答えてしまい、イヴァから何か言われるのかと身構える。

「あら?もうおねむなの?精神は15歳なんだからちょっと付き合いなさいよ」
「…イヴァ?でも、花礫くん、今は3歳児なのよ?身体が付いていかないわ」
「大丈夫よ!寝ちゃったらあたしがベッドまで運んであげるから♪」

ってことで、花礫。お着替えしましょう?

イヴァの言葉に眠気なんかふっ飛ばし全力で逃げようとするが、ガシッとすぐに捕まってしまった。

「無駄よー。そんな可愛い足じゃ私からは逃げられないわよ」
「歩幅が違いすぎますです」
「花礫くん…諦めて」

女性陣の目が尋常じゃないくらい輝いているのを見て、抵抗しても無駄だと悟り大人しくなる。

「……で?何着るんだ?」

変な服は着たくないがその希望は叶えられないだろうと思いながらも、希望を託す花礫は、イヴァを見上げた。

(上目遣い最高ね!!)

「あんた可愛い顔してるから、このワンピースとかでも似合うわよね!ほら、着てみなさいよ」

青色のシンプルなワンピースを差し出され、渋々手に取るが、着替えようとしてふと、手を止める。

「おい。着替えるから出てけよ」
「「「えー。良いじゃない(ですか)」」」

三人は納得がいかないようで動く気配がない。

「当たり前だろ!何で人前でこんな服を着なきゃならないんだよ!」
「あんた今3歳児でしょ?あたし達のことなんか気にしなくても良いのよ〜。子供なんだから」
「精神は大人だ!ガキ扱いするな!」
「あら、可愛い。ほら、早く着なさい」

着替えさせられたいの?
そう言われれば着替えざるをえないため、急いで着替える花礫。

服を脱ぎ、ワンピースに袖を通す。
そこには、ショートカットの女の子が存在していた。

「「可愛い」」
「まあまあ、似合ってますね」
「……嬉しくない…」

屈辱を感じながらもこの体では思うように抵抗も出来ないと実感し、早急に元に戻りたくなった花礫は、明日、平門にでも頼んで燭の元へ行こうと心に決めた。

カシャカシャ

花礫くん!こっち向いて!!

花礫〜次はコレねー!

このウサギさんフード付きの服も良いですよ!!着てください!


きせかえ人形はまだまだ続く……


(この際、與儀でも良いから助けてくれ)


ーー彼の願いは叶うことはなかった。







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