お邪魔虫?いいえ、精神安定剤です。

「……おい」

忙しなく人々が行き交う研案塔。燭も例外なく忙しく仕事をしていた。
しかし、先程から黒い影が燭に付きまとっていた。

「邪魔だ、消えろ」
「酷いですね、燭さん。俺はただ、お疲れであろう貴方を癒しに来たんですよ?」
「いらん。帰れ」

燭の後ろをのそのそとついて回る平門は燭からの暴言攻撃もものともせずに飄々と彼に付きまとう。
決して触れてこないという所も燭のイライラを増幅させていた。
ただじっと、自分の後をついて回られるというのは、触られるよりもストレスがたまるようだ。



燭は、平門と会話すると頭痛がするので、彼に構うのは止めて、仕事を終わらせることに専念した。




2、3時間が経ち、やっと本日の業務が終わった時には平門の存在など忘れていた。

「お疲れ様です。燭さん」
「━っ!? ま、まだ居たのか。早く帰れ。私ももう帰るぞ」

平門に声を掛けられ驚くが、表情には意地でも出さずに、帰宅することを伝え、燭は立ち上がった。



くらりっ


「━っ」
「おっと。……燭さん。無理はしないで下さい」
「………五月蝿い」


疲れからか、立ち眩みを起こし、ふらつくが、平門にガッチリと受け止められて、怪我をせずにすんだ。
しかしこんな弱った姿を平門に見られ、恥ずかしさからか、燭は少し顔を赤らめた。





「燭さん。意地を張らないで下さい。………ほら、言って」
「…………」
「燭さん? …………無言だと自動的にベッドで朝までコースになりますよ?」
「い、癒せ! …俺を抱き締めろ」
「良くできました」




平門は優しく微笑むと、そっと燭を抱き締めた。
燭は、ほんのり頬を染め、平門の背中の服をギュッと掴んだ。


(可愛いな。この人を癒せるのは俺だけ。なんて幸せなんだろう)




天の邪鬼な燭は、恋人が仕事中に訪れても、冷たくあしらうが、本当は平門に触れたいと思っている。
それを長年のカンから知った平門は、こうやって、燭の疲れが溜まった頃を見計らい、彼に会いに来るのだ。



「燭さん。今日は二人でゆっくりしましょうね」
「………ああ。よろしく頼む」



平門の胸に顔を埋めたまま、燭は素直に答えた。



彼らの甘い夜はこれからである。


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