我儘は甘え

「なあ、與儀。アイス食いたいんだけど」
「へ? あ、うん。分かった。買ってくるね!」

輪貳號艇の一室にて、花礫は與儀に食べたいものを催促していた。
與儀はすぐさま花礫の願いを叶えるべく、艇から飛び立ち街へアイスを買いに行った。

その一部始終を見ていた喰は、花礫に呆れたように話しかけた。

「ねえ、そんなんじゃいつか與儀君に愛想つかされるよ」
「は?何でだよ。俺は別にアイツに買ってこいなんて言ってねーし。アイツが勝手に買いに行ったんだろ」
「でも、君が食べたいって言ったから與儀君は動いたんだよ?もう少し、自分の発言に気を付けたら?一応與儀君は輪の人間なんだから。無暗に体力を消耗させないでよね」

(ま、與儀君はこれくらいじゃ疲れないだろうけどさ)

喰の発言を聞き、何かを考え出した花礫は、喰が話しかけても聞こえていないのか動かなくなってしまった。
花礫をからかいに来ていた喰は、面白くなくなり少し不機嫌になりながら自室へ帰って行った。


しばらくすると、與儀の元気な声が聞こえてきて、花礫が居た部屋へ勢いよく與儀がやって来た。

「花礫くん!おまたせ!!おいしそうなアイス買って来たよ!!」
「………ああ、サンキュッ」
「花礫くん?どうしたの?なんか元気ないよ?」
「……なあ、俺、お前に迷惑かけてるか?」
「…へ?」

ソファーで膝を抱えて座っていた花礫に元気がないと心配して顔を近づけてた與儀に花礫は上目使いになりながらもまっすぐ目を見て質問した。
與儀は、花礫の上目使いと急な質問に驚き、思わず、間抜けな声をあげた。

「ど、どうしたの?いつもの花礫くんじゃないよ」
「その…喰がさ、お前のこと俺は全然考えてないって言われて…。確かにお前に我儘ばかり言ってるなと思ってさ。その……お前が俺に愛想つかしたらどうしようって思って……」
「花礫くん……。そ、そんなことありえないよ!!俺、花礫くんがして欲しい事をしてあげるのが楽しみなんだよ?花礫くんがお礼言って笑ってくれるだけで、頼られてるんだと思って、すっごく嬉しいんだ。だって花礫くん、我儘は俺にしか言わないでしょ?基本的には何でも自分でしちゃうじゃない。でも、俺には今日みたいにアイスが食べたいとか言ってくれるから、俺は花礫くんの我儘は、俺に甘えてくれてるんだと思ってるんだけど。…違うかな?」

そう言うと與儀は花礫をギュッと抱きしめた。
花礫は自分が無意識に與儀にだけ我儘を言っていることが甘えなのだと分かり、頬を赤く染め與儀の胸に顔を埋めて、肯定の意を述べた。

「與儀。俺、お前にだったら何でも頼めるんだ。他のやつには弱みは見せたくないけど、お前になら見せても良いって思える。その…ちゃんとお前を信頼して我儘いってるから!!」
「花礫くん……。うん!ありがとう。 大好きだよ」

ちゅっ

「んっ。與儀……俺も…好き」

花礫は與儀の口づけに答えるように、首に手を回し、舌を絡めた。

ソファに沈んだ二つの影は、與儀が買って来たアイスの様に溶け合っていった。











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つくもん誕生日記念小説です(笑)

2013.07.16


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