錠剤は好きではありません。
「くしゅっ」
「あれ?花礫くん風邪?」
本日は天気が良かったため、ピクニックに来ている與儀たち。
无とツクモがシロツメグサで冠を作っているのを眺めていたら、花礫がくしゃみをした。
「いや、熱っぽくもないから、ただの花粉症じゃね?」
俺、この季節いつもくしゃみ出るし。
「た、大変!今すぐお医者さんに見てもらおうよ!そんで、お薬貰おう?」
「病気でもないし要らない。大袈裟だろ」
医者に行くことを與儀が提案するが、花礫はすぐさま拒否した。
そして、與儀との会話が鬱陶しいのか、草原に寝転がった。
「くしゅっ!」
しかし、くしゃみが出てしまい、ゆっくり出来ない。
「ほら!酷くなる前にお薬飲もうよ!あ、病院に行かなくても市販のお薬買って飲もう?それなら良いでしょ!」
「っ、おい!引っ張るな!」
與儀は、くしゃみが止まらなくて、辛そうな花礫を見て、薬だけでも飲むことを提案し、花礫を引っ張り、街の薬局へ行くことにした。
「花礫くーん。どれが良い?花粉症のお薬っていっぱいあるねー」
「あー。だから要らないっつの!」
「ダメだよ!ちゃんと飲まないと!あ、このカプセルのやつはどう?……あ!!見てみて!座薬もある!」
座薬にしようよ!
俺がいつもみたいに慣らしてから入れてあげるよ。
耳元で低い声で囁かれ、ビクッと肩を揺らす花礫だが、顔を赤くしながらも與儀にボディーブローを繰り出す。
「っ//////ふざけんな!!」
「うっ………ひ、酷いよ花礫くん」
「お、俺は薬なんか飲まねーからな!!つか、この座薬、解熱剤じゃねーか!!」
「あはは。ごめーん。でも、何でお薬飲まないの?飲んだら楽だよ?」
頑なに薬を飲むことを拒否する花礫を不審に思い、與儀は尋ねる。
すると、目を泳がせながら花礫は、必要がないからと答えた。
それを見て與儀は、ある仮定にたどり着いた。
「もしかして…花礫くん、お薬飲み込むの…苦手??」
「なっ///んなわけないだろ!ただ、その、薬を飲むほどじゃないから要らないだけだ///」
プイッと拗ねたように横を向いてしまったが、動揺していたことや、耳が赤くなってることから、図星だと分かると、與儀はニヤリと笑い、花礫に抱きついた。
「花礫くん、可愛い!!」
「なっ////離せっ!!」
「もう、可愛すぎ!大丈夫だよ!俺が療師に頼んで飲み薬を作って貰うから!」
それとも、俺が錠剤を飲めるようにしてあげようか?勿論口移しでv
「は?要らねーし、ちょっ離せって!もう大丈夫だから!ほら!くしゃみ出てないだろ?」
慌てて與儀から離れようとするが、がっちり抱きつかれているため、逃げられない。
仕舞いには、薬局の店員がやって来て薬を持たされ店内から追い出された。
「花礫くんが暴れるから、店員さんに怒られたじゃない。でも、お薬くれたね!優しい!」
「お前が店内で抱きつくからだろ!って、ちょっと待て!…その薬……二種類ないか?」
「ん?うん!花粉症のお薬とね、さっき見てた座薬くれたんだ!!」
店員は、二人の会話を聞いていたようで、座薬までおまけで付けてくれていた。
(何してくれてんだ、店員!)
花礫は、薬局の店員を恨みながら、どうやって與儀の薬攻撃をかわそうかを考える。
「座薬は、今度にして、とりあえず、今は花粉症のお薬だよね!さあ、早く艇に帰るよ!!」
「っ!?」
そう言うと與儀は、花礫を抱き上げ空を飛び、貳號艇へ向かった。
貳號艇に着き、與儀は花礫を抱えたまま、自室へ向かい、羊に水を持ってくるように頼んだ。
「離せっ!!薬なんか要らないから!!」
「ちょっ、暴れないで!」
暴れる花礫を必死で押さえながら自室のベッドへ寝かせ、覆い被さった。
「おい」
「大人しくしてね。じゃないとお仕置きしちゃうよ?」
「……///」
夜のスイッチが入った與儀は、意地悪く花礫に笑いかけた。
大人しくなった花礫を満足気に見つめ、與儀は薬を手に取り自身の口へ放り込んだ。
「は?何でお前が……っ!?」
「ーーん」
與儀は、自身の口へ入れた薬を水と一緒に花礫に口移しで飲ませた。
嫌がる花礫だが、飲み込むまで口を離してくれなかったため、こくりと薬を飲み込んだ。
「っはぁ、はぁ。與儀…テメェ…」
涙目で睨み付けるが、與儀は素知らぬ顔で残酷な事実を告げる。
「花礫くん!お薬飲めたね!でも、15歳からは1回3錠だから、あと2回頑張ろうね」
「は?や、やめっ!!ん…ぅん…」
薬を飲むことが目的だったのに、いつの間にかただの口付けになり、最後まで美味しく戴かれた花礫は、錠剤を一人で飲めるように練習しようと心に決めたのでした。
あ!!座薬使おっか☆
!?
▼▼▼▼
後書き
錠剤が苦手なのは私です。
朝から目が痒くて、くしゃみが止まらなかったけども、気合いで乗りきりました。
実際、花粉症の人に口移しとかすると、鼻つまってるから、息できないよね(笑)
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[mokuji]
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