君が産まれた日
最近、與儀が冷たくなった…。
普段はあんなにスキンシップしてくるのに、なんかよそよそしくなったような気がする。
何なんだ?
與儀だけじゃない。
ツクモや无までも最近、よそよそしい。何かを隠しているようだ。
くそっ。何か気分悪いな。
「なあ、アイツら最近、変じゃねーか?……って、お前には分からないか。……何か言えよ」
つんっ
ムカついたから羊に八つ当たりした。
なんか、コイツらも何考えてるかわかんねーんだよな。
あ、触ると柔らかい…
「暴力反対メェー!!與儀たちは、忙しいメェー!いい子にしてるメェー!!」
いつの間にか4匹ぐらいに増えやがって、部屋に押し入れられた。
ちっ。何だよ……羊まで……
ここまでされると、もうどうでも良くなるな。
今日はイライラするから、アイツらのことなんか考えずに寝てやる!
……まだ全然眠くないけど…。
*
次の日は、羊の頭突きで目が覚めた。
「朝だメェ!起きるメェー!!」
「痛っ!!何だよテメェーふざけんな!!」
めちゃくちゃ痛かったんだけど。コイツらは自分の角の殺傷能力を理解してんのか?
文句を言おうとしたら、部屋のドアが開いて、何故かキイチが入ってきた。
「花礫さん、起きましたか?早く仕度して下さい!今日はキイチの買い物に付き合ってもらいますよ!」
訳の分からないまま、着替えさせられ(何故かキイチセレクトの服)、街へ行くことになった。
「これとこれ、どっちが良いですか?」
無意味に俺に意見を求めてきて、凄くうざいな…。でも、コイツのお陰で街に降りれたからな。
それに、與儀に会わなくて済むし……協力してやるか。
「そっちの方がいいんじゃね?」
「わかりました。これにします」
その後も、入る店毎に俺に意見を求めてきて、俺が選んだ方を買っていく。
コイツは自分の好みってないのか?
なんやかんやと、歩き回って、少し疲れたなと思っていたら、キイチがお茶にしようと言ってカフェに入った。
「どれにしますか?ここのはどれも美味しいですよ!!」
本当に常連なんだろうな…さっきから店員と話したりしてるし。
俺は適当にアイツのおすすめとやらを食べることにした。
運ばれてきたケーキは、とてもうまかった。俺は、あっという間に食べきったぜ。
アイツはニコニコしながら自分の分を食べていた。
あと、ツクモにお土産買ってたな…。
俺も何か與儀に買おうかな……。
俺が冷たいからアイツも離れたのかもしれないし……。
嫌だけど、キイチに相談してみるか?
そんなことを考えているうちに、キイチも食べ終わり、次の店に行くことになった。
何故か、キイチが奢ると言ったから、まあ、良いんじゃね?と思って奢られた。
次に来た店は、雑貨屋だった。
ちょうど良いから與儀の好きそうなものを捜すか。
「花礫さん!何か欲しいものがあるんですか?」
「ん、いや、與儀に何かやろうと思って…」
「え?何で、今日は…いや、何でもありません!分かりました!キイチがお手伝いします!」
そう言って、與儀に合いそうなものを一緒に探した。
「あ、これ良いかも…」
「本当ですね!これにしましょう」
與儀へのプレゼントも買えたし、なんだかんだで楽しい買い物だったな。
キイチにツクモから電話があって、急ぎで帰ることになったのは、ちょっと残念だな。
コイツも結構良いヤツだと言うことが分かった一日だったな。
今度からはもう少し話すようにしてやるか。
「花礫さん!帰りますよ!」
「おう。何か、その…さんきゅうな、いい気分転換になったし」
「なっ/////」
一応、礼とか言ってみる。
そしたらコイツ、顔を真っ赤にしやがった。なんだ?俺まで恥ずかしくなるじゃねーか///
二人とも顔を赤くしながら艇に戻った。
パンッパンッパンッ!!!
「「「花礫(くん)(君)誕生日、おめでとう!!!」」」
艇に着いた瞬間、クラッカーが鳴らされ、與儀とツクモと无が叫びやがった。
ーーん?今、誕生日がどうとか言わなかったか?
「ああ、俺、今日、誕生日か……?」
「花礫くーん!!寂しかったよー!ホントはね、日付が変わる瞬間とかに言いたかったんだけど、準備が間に合わなくて…」
とりあえず、中に入りませんか?
キイチの一言で俺らは場所を移動した。
案内された場所は、綺麗に飾り付けがされていて、豪華な食事がテーブルに並べられていた。
ーーうまそう
「凄いでしょ?飾り付けは、俺と无ちゃんで、料理はツクモちゃんとイヴァ姐さんが作ったんだよ!」
あと、喰くんと平門さんは、買い出しとかをしてくれたんだ!!
嬉しそうに説明する與儀に少し苛ついたけど、最近まともに話してなかったから、ちょっと嬉しいな。ほんのちょっとだけだけどな!!
どうやら、俺の誕生日パーティーを開いてくれたみたいだ。
ツバメたちといた頃もあんまり誕生日って祝わなかったからな……。
まあ、俺が家に帰らなかっただけだけど……。
何か、くすぐったい気持ちになるな。
ニコ
「ありがとな!」
「花礫くん///笑って…////」
何故か、目の前に居た與儀は真っ赤になってたけど、礼言っただけだろ?何でそんなに照れるんだよ…。
それから皆から一人ずつプレゼントを貰った。
ツクモの作った與儀人形はへたれな感じが似てて笑える。
无は、似顔絵か…、額縁買わないとな。
それぞれが個性ある品物をくれて、感謝するぜ。
皆で、笑い、食事を食べ、ケーキを食べて、楽しい誕生日を向かえたと思う。
……ツバメたちも居たら、もっと楽しかったのかな?
俺の誕生日も後2時間を切った頃に、平門がお開きの合図をした。
「じゃあ、そろそろ、お開きにしようか。无も眠そうだしね」
「そうね、平門!喰!後は、大人だけで飲みましょう♪」
「イヴァさん、飲みすぎですよ」
じゃーねーお休みー!!
酔っ払いイヴァが喰を引きずって消えていった。
喰、既に死にそうな顔してるぞ。大丈夫か?
「じゃあ、花礫さん、キイチたちは、ツクモさんの部屋でゆっくりしますので!お休みなさい」
キイチ、ツクモ、无が仲良く部屋へ去っていった。
残ったのは……
「花礫くーん♪俺の部屋に行こう?ここからは恋人だけの時間だよ」
「うぜぇ」
そう言いながらも、與儀に着いていっちゃうんだよな。
部屋に入るとすぐに抱き締められた。
「花礫くん。本当に生まれてきてくれて、ありがとう」
なんだよ……最近、よそよそしかったのって、俺にパーティーのことを話さないようにするためだったんだよな。
「與儀に、冷たくされて、嫌われたかと思った……。今日、キイチと街に行って、その、お前の事も少し聞いてもらってさ、そんで、なにか、お前と一緒のものが欲しいと思って………これ……」
キイチと二人で選んだもの、それは、ネックレスだった。
なんか、普段から付けれるのが良いと思ったんだよな…。
「え?俺に?誕生日なのは、花礫くんなのに…。でも、嬉しい!!花礫くんとお揃いなの??」
與儀は思った以上に喜んでくれた。早速付けてるし。
「じゃあ、花礫くんにもっとお返ししなくちゃね!」
「は?お返し?要らねーよ。プレゼント貰ったし」
「いや、俺がよろこばせてあげる♪」
プレゼントは、オ・レ☆
そう言ってアイツはベッドに押し倒してきた。
「っ///」
「残り少ない誕生日を愉しもうよ」
そう言ってキスしてきた。
……今日は誕生日だからな。たまには素直になってやるか。
俺は、與儀を抱き締め返して、キスを深くしてやった///
「與儀、好き///」
「!?ーーっえ?花礫くん?」
自分にプレゼントだ。今日はとことん、甘えてやるぜ。
End
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