ずっと一緒

深夜2時を回った頃、自室で寛いでいる平門の耳に羊の声が聞こえてきた。

どこ行くメェー。部屋に戻るメェー。

(ん?无が寝ぼけたのかな?)

きっと羊たちが連れ戻してくれるだろうと、特に気にせず読書を始めた。

コンコンッ

しかし、すぐさま読書は中断された。
(!?珍しいお客ですね……)

「入っておいで。花礫」

ドアに向かって声をかけると、遠慮がちにドアが開かれた。

「どうしたんだ?」
「…………」

ギュッ

花礫は無言で抱きつき離れなくなった。
平門は、困ったと眉をひそめながらも、花礫の珍しい光景を眺めた。

「ほら、花礫。ここじゃあ、風邪をひいてしまうよ。さあ、中に入ろう」

なんとかソファまでたどり着いたが、無言のまま、ただ抱きついている花礫を見て、寝ぼけているのだと平門は確信する。
花礫は、親に甘えるような仕草をしており、こうやって見ると年相応に見える。

「怖い夢でも見たのかい?」

優しく頭を撫でながら問いかけると、花礫は一層抱きつく力を強めた。

(可愛いらしい所もあるんだな。でも、無防備過ぎだよ)

そんなんじゃ襲ってしまうよ?

問いかけても反応がないため、仕方なく花礫を抱き上げベッドへ移動した。

「花礫、今日は一緒に寝よう」
「………っしょ」
「ん?何だい?」

花礫が何やら呟いたが、小さすぎて聞き取れなかった平門は、顔を近づけた。

「ん……ずっと一緒………いて……」
「ーーっ!?花礫。ああ、ずっと一緒だよ」

平門からも抱き締め返すと、花礫は幸せそうに微笑んだ。平門も幸せな気分になりながら眠りについた。

(たとえ寝ぼけてても、自分の言葉には責任をもってもらうよ)


おやすみ、愛しい子。





次の日の朝、平門のベッドで抱き締められながら寝ている自分に驚きの声をあげる花礫がいた。

「ーーっな/////」
「おはよう、花礫。よく眠れたかい?」
「何で?お前が……??」
「やはり、覚えてないんだね。お前は昨日この部屋に自分から来たんだよ。俺に抱きついて離れなかったからそのまま寝たんだ」

無意識のうちに平門を頼ってしまっていたことを知り、彼のことが気になっていた花礫は、恥ずかしくなった。

「///わ、悪かったな。迷惑かけた」
「いや、でもあの約束は守ってもらうよ」
「……約束?」
「ずっと一緒ってお前が言ったことだよ」

離さないからね。



この日から平門のアタックが始まった。


素直じゃない花礫が自分の恋心を認めるのも時間の問題である。


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