危険な放課後
「やあ、こんにちは」
烏野高校の門前に、女の子の人だかりがあり、不思議に思いながら通りすぎようとしたら、不意に声を掛けられた菅原。
たまたま今日は部活がなく、委員会で遅くなったため一人で帰宅していたので、声を掛けられたことに驚いた。
そして、その人物を見てますます驚くことなる。
「え?!及川?何でここに?」
影山なら体育館近くで、自主練してますよ。
そう言い、女子の集団の視線が痛いので早く立ち去りたい菅原は、影山を生け贄にし、及川から逃れようとした。
「まって、スガちゃん。今日は君に用があるんだ」
「え…俺に?」
(てか、スガちゃんって何だよ…)
「この前は、試合に出てなかったけど、セッターでしょ?同じ3年だし、意見交換とか出来たら良いなぁって思って。来ちゃった☆」
ウィンクしながら近寄ってくる及川に一歩後退る菅原。
「ごめん。俺、急いでるから!!」
及川に恐怖を感じ逃げ出そうとしたが、ガシッと腕を掴まれてしまった。
「逃げないでよ。やっと話せるんだから」
「……やっと?」
掴まれた腕が痛むが気になることを言い出す及川に逃げる足を止める菅原。
「1年の時から気になってたんだ。でも、話しかけようとしたら、いつも主将さんが邪魔してきたんだよね〜。今日はラッキーだね」
「………へぇ」
(え?何、この人…。何かストーカーみたいなんですけど…。大地!!何で居ないのこんな時に!!)
及川に恐怖を感じつつ、逃げる手立てを考えるが、完璧なまでに菅原をマークしているため、逃げる隙が見当たらない。
「ねえ、スガちゃん。これからどっか行こうよ!」
デートしよう。そう言うと菅原の返事も聞かずに及川は、腕を掴んだまま歩き出した。
「ちょっ、離してよ。俺は、あんたに構っている暇はないんだよ」
「照れない照れない。俺が楽しい所に連れて行ってあげるから。損はないよ」
なんやかんやと話しながら引きずられ、坂ノ下まで来てしまった。
(もう、面倒くさくなってきた・・・。今日だけ我慢すれば良いか)
菅原が諦めて及川と過ごすことを選ぼうとした時、坂ノ下から救世主の声が聞こえた。
「スガ!!」
「・・・・・・大地?・・・なんで居るんだ?」
一緒に帰ろうと思って坂ノ下で待ってたと話す澤村は、菅原の腕を掴む及川を睨み付けた。
「及川。なんでここに居るんだ?うちは今日は部活がないけど、そっちはあるはずだろ?それと、スガから手を離せ。今すぐに」
「おっかないね〜主将さん。俺はスガちゃんと仲良くなりたかっただけだよ。それに、部活も今日は休みなの!今からデートなんだから邪魔しないでよね」
「おいっ!及川!!行かないって言ってるだろ!!」
「さっき諦めかけてたじゃない。別に今日くらいいいでしょっ☆」
ぐいっ
澤村は、不意に菅原の腕を掴み、及川から遠ざけようとした。しかし、及川も負けじと腕を掴む力を強め、両方から引っ張られる形になった菅原。
「痛っ。ちょっと!二人とも離してよ!」
「主将さん。離して。スガちゃんが痛がってる」
「あんたが離せば済むことだ。スガは俺と帰るんだ。元々あんたと行くことを嫌がってただろ?主将として、部員を助けるのは義務だからな」
「へぇー。義務だから助けるの?そんな嘘ついていいのかな〜??」
小声で、男として勝負しなよ。と話しかける及川に、怯む澤村。
「う、うるさい。俺は今の関係を壊したくないんだ。距離は、徐々に縮めていくものだろ」
二人の会話についていけず、痛みにイライラが積もった菅原は叫んだ。
「何言ってるか分からないけど、取りあえず二人とも手を離せよ!!デートでも何でも今度してやるから」
「「本当(か)?」」
パッと手が離され、菅原に詰め寄る二人。
「う、うん。・・・あれ?大地も?」
「当たり前だろう!お前が言ったんだからな。今週の土曜日にでも出掛けようか」
「ちょっと待ってよ!俺の方が先にスガちゃんを誘ったんだからね!先に俺とお出かけだからね」
思わぬ方向に話が進み、あっけにとられる菅原。
「え〜っと……三人で行くのはダメ?」
「「ダメ!!」」
物凄い剣幕で菅原の案を却下する二人。
二人の真剣さに恐怖を感じ始めた菅原は、早く事が終われば良いのにと切に願った。
「仕方ないね、ここは公平にジャンケンでもしようか」
「そうだな。一回勝負だからな」
ジャンケンでどちらが先に菅原とデートするかを決める事になり、真剣にジャンケンをし始めるが、アイコばかりで決着がつかない。
ジャンケンぽん、アイコでしょっ!!
アイコでしょっ!!
アイコでしょっ!!
5分程眺めていた菅原だが、この隙に帰ってしまおうと思い、そっとその場を離れた。
(今度から不用意にあの二人を会わせたらダメだな……部員に伝えとこう)
途中で出会った影山に愚痴を溢しながら帰宅する菅原。
彼が居なくなったことに、二人が気付くのは………………??
Fine
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