中学生時代、
君に会ったことを
――僕は後悔…してるのか、な
「……君って、俺のこと嫌いだよね」
ドクン、
心臓が痛い。
「…なに、急に。嫌いなんかじゃないよ、友達だって言ったでしょ?嫌いな奴と友達になれるほど私は人間出来ちゃいないよ」
自分はいま、どんな顔をして答えているのだろうか。笑えてたならそれでいい、落ち着きさを失った身体を押し返す様に僕は使い終えた注射器を透明な袋に戻し歯を噛み締める。
何故、何故だろうか、
頭の中にはあの日、中学生のあの時、を鮮明に思い出す。似通った…いや、違う。古びた筈の記憶が昨日のことのように頭を覆った。
そうだ、一緒だ。
「友達、ね。…嘘だろ」
「…嘘じゃない。いまの君には分からないだけだよ、」
「記憶喪失だから?それが君の逃げ道なの?」
「………っ」
忘れてた、記憶が、
あの日、何故自分が彼に刺されたのか。何故彼が泣きそうな顔だったのか。全部全部頭に蘇る。昔のことなのに臨也の声が頭に響いた。
――新羅は、君は嘘ばっか!俺が嫌いならそう言えばいいだろ!なんで嘘ばっかつくんだよ…っ――
ああ、そうだ。あの日の彼も僕の嘘を見破った。逃げ道ばっかを求める俺に臨也は嘘だと言った。自分が嫌われてると思って否定する言葉に嘘だと言った彼の気持ちはどうだったのだろうか、作り笑顔しか向けない僕をどう思ったのだろうか。
そして、今も。
嘘だと決め付けた、記憶のない不安である筈の彼は、どんな気持ちなのか。
違う、
違う違う違う違う、
そうじゃ、ない…っ
「…さっき、君は痛かったら言えって言ったよね…」
答えられないでいる僕に、臨也が向けた声は消え入りそうで、記憶を失ってから初めて色付いていて、それが尚更泣きそうだと、気づいてしまう。
「君が、―新羅が否定する度に、無理矢理作った笑顔を向ける度に、よく分かんないけど」
「…―凄く胸が痛いんだよ」
ねえ、臨也。
あの日、あの時、君を抱いた時。
君はなんで泣いてたの?
なんで、謝ったの?
全部全部、知ってた。中学生時代から、君よりも前に知ってた。俺を刺したあの時、なんで君が泣きそうだったのかも、屋上で静雄との交際を告げた時、耳に入らなかったと嘘ついて聞かなかった君の言葉も、君が抱いた次の日から、君も俺を避けていたことも。
――知ってた
――知ってたんだよ
君が僕を、好きだったこと、も。
気付いたら、持っていた注射器の入った袋は床へと落ちていて、見開かれる瞳をレンズ越しに見て、何処か他人事のように、僕は、そのまま彼を押し倒した――
僕は臨也が嫌いで、
僕は臨也が“ ”
僕は、臨也が、“好き”だった
違う、いまも、
(どうしようもなく好きだった)空白が埋まった…!!
てか静雄はどこ消えた