『新羅は何故そんなに、臨也が嫌いなんだ?』
そう言えば昔、かなりストレートにセルティに問われた事があった。
嫌いだなんて口に出した筈はなかったのだが流石僕のセル…本人に言ったら殴られそうなので伏せておこう。長年一緒にいる為か正に以心伝だ。
「…別に嫌いじゃないよ、友人としては…そうだね、好きだと思うけど」
『そういうことじゃないんだ、なんて言うか…あー!人間としてはどうなんだ?』
ニコリと愛想良い笑みを浮かばせて決まりきった言葉を並べれば、セルティはもどかしそうな表現をした後にカタカタと忙しくPDAを打ち込んで私に見せ付ける。
――人間と、して
どうだろう、
僕は、
臨也を、
――"嫌い"じゃなきゃいけない
「愚問だな、セルティ。答えるまでもないさ」
『…新羅。だってお前は、前まで』
セルティは何かを打ちかけて、手を止めた。それ以上打ち込む事が出来ないのか、躊躇いなのか、どちらにしろ、俺は続きの言葉を聞く気はないのだ。
それはまるで、自己暗示。
バシャバシャと、水しぶきが飛ぶ。
それは私が顔を洗ってるからで、自然な事。なのに静寂を守り切る私の頭には実に不自然で、騒がしい。
冷たい、ああ冷たい。
まるで非現実的だ。
先程の臨也の表情が目に焼き付いて離れない。焦がした様に残る記憶。そう言えば昔もそんな表情を目にした。
それはいつの事だったか?、思い出すのも面倒で、怠くて、苦しい。
記憶がない今、彼の心情が分からない。――いや、記憶があった前も、彼の心情なんて分からないままだったのに。
――ねえ、セルティ
僕は一体どうしたらいいのかな?
――なあ、臨也
なにを言おうとしたの?
――あのさ、静雄
離さないと言ったのは、君だろ?
蛇口を閉める。
渦巻く気持ちに吐き気がして気持ち悪くて仕方がない。
なら、
いっそ、
壊してしまえば、いいのかな?
(そうしたら、)
(あんな表情見せることもなく)
(彼は僕の目の前から消えてくれる、?)
(嘘、やっぱり"うそつき")
次はあれの気配が…(ドキドキ