「シンディちゃん、こっちにも注文お願い!」
「はーい♥」
「シンディちゃん、この前のマジックショー良かったよ」
「わ〜、ありがとうございます!シンディ感激♪」
揺れる黒髪ツインテール、女にしては高めの身長にそぐわないほどの萌え声とぶりっ子キャラ。シンディことシンシャ、ガレンシアにある酒場レット・バトラーの新人アルバイトである。それがこの俺、海賊専門の泥棒ハイドランドのもう一つの顔。
「ふぅ……今日はお客さん多めだなぁ」
「お疲れ様、シンディくん。
この店にはもう慣れたかい?」
「そうですねぇ、まだまだ覚えなきゃいけないことばかりですけど…」
売り上げは…と確認していたお昼の仕事終わり。
茶味がかったアッシュグレーの髪の男性が優しい笑みを浮かべて聞いてきた。この店のマスター、ギムレットだ。
「まだ始めて1ヶ月だよ?
むしろ早すぎるくらい上出来」
生意気、と笑いながら小突いてくる金髪は先輩従業員のエルム。彼女も働き始めたのはつい半年前くらいだが、今やこの店の顔となってる看板娘だ。
しかし早いようで1ヶ月、まさか今も自分がこの店で働いているなんて。あの時は思いもしなかっただろう。
「もうそんなになるのか……」
あの日も今日と同じくらい、いや今日以上に予約がぎっしり埋まってたっけな。
そうこれは、俺がシンディとして初めてこのRHETT BUTLERに訪れた日のお話。シンディの始まりの物語。