ハロウィン | ナノ

さぶろーと




雷蔵を自分と同じ髪型にした女の子はまた標的を探しています。

「何やっている?」

「わっ」

いきなり後ろから声が聞こえたので女の子はびっくりしました。振り向けば雷蔵と同じ顔の少年、鉢屋三郎が立っていました。

「さぶろー!」

「驚かせてしまったか?」

「ちょっとだけびっくりしたよ。あ、さぶろーさぶろー」

「何だ?」

「とりっくおあとりーと!」

女の子の言葉に三郎は固まってしまいました。

(しまった今日が例のハロウィンだったのか……!お菓子用意し忘れていた……)

ハロウィンは知っていましたがいつにあるのかは知らなかったのです。

「すまない……」

「お菓子ないの?」

「……ああ」

悔しそうに呟く三郎の心境は女の子には分かりません。お菓子がなければ悪戯をすればいいだけですから……。

「じゃあいたずらする!」

女の子は早速行動に移しました。助走のために少し離れて、三郎に飛び付きます。

「おい危ないぞ!?」

落ちそうな女の子を慌てて三郎は抱えました。女の子を見れば三郎の顔に手を伸ばしています。

「…私の変装剥ごうとしてるのか?」

悪戯が自分の変装を剥ぐことならば止めなければ…三郎は思いました。

「ううんしないよ。さぶろーのかみふたつにむすぶの!わたしとらいぞーとおそろいに!!」

この後誰が見ても嬉しそうな髪を二つに結んでいる三郎がいたそうです。

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