ハロウィン | ナノ

かんちゃんと

女の子はさっそく標的を見つけました。前方からうねうねした髪型の少年が歩います。彼の名前は尾浜勘右衛門。五年生の中で一番女の子と仲がいい少年です。女の子は勘右衛門目掛けて駆け出しました。

「かんちゃんー!!」

大声を出すと、最初から気づいていた勘右衛門は女の子が近くまで来るのを微笑みながら待っていました。

「おはようちびちゃん」

ちびちゃんというのは女の子のあだ名です。忍術学園で一番年下で体格も小さい女の子は、ちびちゃんやおちび等色んなあだ名で呼ばれます。名前で呼ぶ人よりあだ名で呼ぶ人が多いくらいです。ですが、女の子は気にしていませんでした。

「その恰好可愛いね。どうしたの?」

女の子の恰好がいつもと違うことに勘右衛門は気づきました。

「きょうははろうぃんなの!だからまじょのかっこう!」

「ハロウィンかーそういえば三郎がそんなこと言ってたかも」

「とりっくおあとりーと!おかしくれないといたずらするよー?」

女の子は無邪気に笑いながら言いました。それに勘右衛門は何かあったかなと自分の懐を漁ります。おっとした顔をしながら懐から出てきたのは煎餅です。

「お菓子あったからほしい?それとも俺に悪戯したい?」

「どっちも!」

勘右衛門の質問にすぐさま女の子は答えました。

「ははっ欲張りだな〜ちびちゃんは」

勘右衛門は苦笑しましたが、結局女の子に煎餅と悪戯として自分の髪の毛で遊ぶことを許しました。

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