雨に作兵衛に告白されたい
「困ります食満先輩!」
俺は叫んだ。食満先輩と言っても用具委員長でいらっしゃる食満留三郎先輩ではなくて留三郎先輩の妹の四年生くのたまの食満名前先輩だ。
食満先輩は俺の言った意味を理解していないらしく首を横に傾げる。
「何で?」
「これは俺が任された仕事だからこれは俺一人でやります!」
食満先輩が持っているのは錆びた手裏剣が詰まった箱。
それは留三郎先輩に頼まれて俺が片付けるはずだった物を何で先輩が持ってるのか。
彼女が忍たま、くのたま関係なく後輩を甘やかすのが好きだからだ。それは一学年下の俺にも適応されてしまう。
「これ結構重いから手伝うよ」
手伝うと言っても箱は一つしかなく、食満先輩が持ってる。俺は手持ち無沙汰だ。
「それに早くしないと濡れちゃうし」
食満先輩の言う通り雨がポツポツ降り始めている。あっという間に本降りになるだろう。どちらかが引かないと二人ともずぶ濡れになってしまう。
「すいません食満先輩…よろしくお願いします」
先輩が簡単に引くわけがないので必然的に俺が引くしかない。複雑な心境だ。だって俺は食満名前先輩の事が好きなんだから…先輩にとって俺は異性じゃなくて、後輩としてしか見てくれていない。悔しい。
用具倉庫に一足先に進む先輩を見て、俺は小さくため息をついた。
結局用具倉庫に運んでもらうだけでなく、棚に置くところまでしてもらってしまった。流石に申し訳ないと言ったが、食満先輩に押し切られてしまった。
「さて作兵衛」
終わった食満先輩が俺の方を向く。
「さっきから気になってたんだけど、食満って私それとも兄さんどっち?」
「そりゃあもちろん留三郎先輩じゃねぇ目の前にいる方です」
さっきから俺の目の前にいるのは、食満先輩だけだ。何で今更な事を言うのだろうか。
「兄さんが名前呼びなのに私は苗字呼びって不公平!」
「不公平って…」
「…作兵衛兄さんの方が好きなの?」
しょんぼりする先輩。俺より年上なのに子供っぽく感じる。
…俺の気持ちも知らないで。
「俺が好きなのは先輩あんたですよ!」
そう思ったら頭で考えるより口が動いた。留三郎先輩は委員長として尊敬しているという意味の好きで、名前先輩の好きと全然違う。
…あれ?勢いで言っちまったがこれって告白じゃねぇか!?
「作兵衛本当!?」
内心慌てている俺とは逆にぱああああと効果音がつくくらい嬉しそうな先輩。
「…ええ」
「やった!嬉しいありがと作兵衛!私も大好きだよ!!」
あー…絶対告白なんて思ってないなこの人。
次は雰囲気とか選んできちんと告白しよう。
***
瑠千様リクエストありがとうございました!!告白されたいなのに作米視点で書いてしまったのでされた感ないですね…後日夢主視点を上げます…
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