晴れの日に四郎兵衛を本気にさせたい
成長設定。
彼の本気の顔を見たことがない。
浮かぶのはいつもおっとりとして笑っている彼だけ。だから一度でいいから彼、時友四郎兵衛の本気になった姿を見たくなった。
「シロちゃん勝負しようよ」
真昼間だと彼が本気になってくれないからと選んだ時間は夜。しかも新月なため雲が晴れていても星が唯一の明かりな日だ。
裏山に呼び出したシロちゃんがやって来ていきなり私は言った。
「えっ勝負ですか!?」
びっくりするシロちゃん。私達は恋仲の関係だから勝負とか予想してなかったのだろう。残念。今日の私は甘い空気を望んでないの。
「うん。勝負、種目はね…鬼ごっこでいいや。シロちゃんが鬼ね」
「いきなり言われても…」
「シロちゃんの本気がみたいから」
「僕の本気?」
私の自己満足だから理解してくれなくてもいい。
「ちなみに捕まえなかったら次屋に浮気してって頼むから」
「!」
シロちゃんの顔色が変わる。現体育委員長である次屋。あいつは来るのは拒んだりしないから頼めば受けいれてくれるはずだ。
「じゃあ始めるよ」
シロちゃんに背を向けて逃げるつもりだったのに…出来なかった。
「ダメ」
シロちゃんが私の腕を掴んでいるからだ。2、3メートルあった距離はいつの間にか縮められて彼の顔はいつも浮かべている笑顔でなく怒りの表情。ゾクリと寒気がした。
「次屋先輩と浮気だなんて絶対許さない…!」
いつも通りの声量。だけど私の耳には、はっきりと聞こえた。
結局、この後私はシロちゃんに強制的に部屋に連れていかれて鬼ごっこは出来なかった。
end
シロちゃんを本気にさせ隊
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