小説 | ナノ

なつまつり


(現パロ)


目の前の食満くんの背中が遠い。

二人で夏祭りに来たのに隣に並んで歩いていなくて食満くんは前を歩いている。

さっきまで並んで歩いていたけど、遠くに七松くん達がいたのを見つけてしまってから食満くんは前を歩いている。人混みを掻き分けながら慣れない下駄で追いかけるのはちょっとつらい。

こんなことになるなら浴衣着るんじゃなかった…けど待ち合わせした時に似合うなって照れ笑いした食満くんの表情は見れて嬉しかったから後悔はしたくない。

「食満くん…!」

手を伸ばして食満くんのシャツの裾掴む。立ち止まってこっちを振り向いた食満くんは申し訳なさそうな顔をしていた。

「…悪い。先々行きすぎた」

「ううん…私と一緒にいるの七松くん達に見られるの嫌だったんだよね」

一緒に夏祭りに行くのは二人だけの秘密。七松くん達にばれたら会った時に茶化されてしまう。そうなったら私も恥ずかしいし食満くんも恥ずかしい思いをしてしまう。だから食満くんが先に行くのも分かる気がする。

「いや誘ったの俺だしやっぱり俺が悪い。足大丈夫か?」

疲れてるけど痛くはないので首を横に振る。

「よかった…じゃあ」

んと差し出された右手。手を繋ぐってことかな。

「…いいの?」

さっきは気づかれなかったけど手を繋いだ所を七松くん達に見られたら…。

「大丈夫だ!こうしたら周りから手繋いでるのをばれないだろ」

そう言いながら食満くんは私の手を握って短パンのポケットに繋いだ手を入れた。

「よし行くか」

「…うん!」

夏祭りはまだ始まったばかりだ。

*
小学生〜中学生イメージだったり

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