小説 | ナノ

12〜富松作兵衛のバヤイ〜


「…富松」

名前の声が聞こえた。小さいけど間違いねぇ!

「名前!」

聞こえた声を便りに草むらをかき分けたら名前がいた。

よかった無事に見つけれた…!

安堵したが、名前が木に寄り掛かってぐったりしてるのを見て一気に不安に変わる。

ぱっと見感じでは怪我をしてるようには見えないが…もしかしたら俺の目に見えない所を怪我しているのかもしれない。

「怪我してんのか!?」

慌てて駆け寄って見えない腕の裏や背中を見る…出血はしてないみたいだが…。

「怪我はしてないけど…ちょっと盛られた」

「盛られた!?」

怪我じゃなくて毒か!何の毒を盛られてるのかも分からない。数馬だったら分かるかも知れないけど…くそっ。

「あー大丈夫死にはしないよただの痺れ薬みたいだから」

焦る俺に対して名前は焦っていない。恨めしげにある名前を呼ぶ。その名前は聞いたことがあった。確か名前の同室のくのたまの名前だ。

「痺れ薬って事は身体が痺れてるだけか?他に痛みとかあるか?」

俺が聞けば名前はないよと答えた。

「よかった…!」

答えを聞いた瞬間、本当に安心して衝動的に名前を抱きしめた。暫く名前の体温を感じて…こんな行動をとったら嫌がられるんじゃねぇかとか今更になって不安になった。

「悪い。俺に抱きしめられるの嫌…だよな」

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