小説 | ナノ

はぐはぐ


ぎゅっぎゅっと抱きしめる。抱きしめたら同じくらいそれ以上の力で抱きしめ返してくれる。嬉しくて笑顔になる。

「さっちゃん大好き!」

「僕も大好きだぞ!」

上を見上げたらさっちゃんも笑顔。また嬉しくなる。

「左門ーそろそろ行くぞー」

やる気のない声がさっちゃんを呼ぶ。

「何だ三之助。まだ時間あるだろ」

声の主、三之助さんに不満の声をあげるさっちゃん。私も不満だ。

「んーまだ時間あるけど作兵衛が」

「お前らのお守りしながら行くのは倍の時間掛かるんだよ」

さっちゃん越しに作兵衛さんの方を恨めしく見ればため息をついていた。

「…そんな目でこっち見るなって俺がいじめた見たいじゃねぇか」

「あー作ちゃんが名前いじめた」

「だから違うっての!ほら!三之助、左門行くぞ!」

作兵衛さんが急かしたので渋々さっちゃんは私を離す。私はまだ離れたくなくてさっちゃんの体を抱きしめたままだ。

「なあ作兵衛!名前連れて行って…」

「ダメに決まってるだろうが。名前も左門離せ」

「……はーい」

仕方なくさっちゃんを離す。今から学校に行かないといけない。さっちゃんの通う中学校と私の通う小学校の方向が家から逆方向。だからここでお別れだ。

「じゃあねさっちゃん…」

「…ああ。終わったらすぐ迎えに行くからな…!」

「うん…待ってる!」



はぐはぐ
(…あいつら毎朝同じ事してよく飽きないよな。by作兵衛)


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ハグの日

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