小説 | ナノ

半分こ

雰囲気成長



「左吉、ひざ枕してあげるよ」

会計委員会が無事に徹夜無しで終わったのでご褒美にと思って提案してみた。正座した自分の膝を叩いて促したら

「遠慮する!」

間髪入れずに断られた。

左吉の耳が赤い。照れてるのだろう。

予想通りの反応で私は苦笑する。

「名前俺は?俺は?」

そう言いながら団蔵が後ろからぎゅっと抱きしめてきて私の肩に頭を埋める。

「団蔵くすぐったいよ」

首筋に団蔵の髪が当たってくすぐったい。まるで犬にじゃれつかれるみたいだ。

「俺にはひざ枕してくれないの?」

「だって団蔵は言わなくたって勝手に私の膝にのるじゃん」

「ははっ違いない」

背中の温もりが無くなったと思えば今度は膝に重み。団蔵が頭をのせていた。素早い。さっきまで疲れたもう動けないと言っていたのはどこのどいつだ。

「あー疲れた」

「団蔵!」

左吉が怒鳴り声を上げる。

「さきっちゃん羨ましいの?」

「…っ。誰が羨ましくなんか」

珍しい団蔵が優勢だ。団蔵の方が余裕で左吉がいらついて声を荒げている。

「本当に?」

「馬鹿みたいにへらへら笑うな!これだからあほのは組は…」

「誰があほのは組だよ!関係ないだろ」

「団蔵煽っちゃあダメだよ。左吉もあまり熱くならない」

口喧嘩から殴り合いの喧嘩に発展する前に止めると二人は渋々黙った。

そして私の膝の真ん中にいた団蔵の頭が右にずれる。

「仕方ないな。さきっちゃんに半分貸してやるよ」

「団蔵が偉そうに言うことじゃないでしょ」

「あだっ」

団蔵の頭を叩く。

「左吉おいで。もともと左吉のためのひざ枕なんだからさ」

「じゃないと一人占めするぞ」

私と団蔵は笑って左吉を誘う。さっきは断られたけど左吉は照れてただけで素直じゃないだけだ。

さて左吉はどうするのかな。

「…」

左吉は黙ったまま私と団蔵を交互に見た。

やがて左側にも重みがかかる。私はもう一度笑った。



end

prev / next
[ back to top ]