小説 | ナノ

8〜富松作兵衛のバヤイ〜


「作兵衛大変だよ…うわあっ!」

叫び声と共にバキッと襖を壊し転がって俺の部屋に入ってきたのは数馬。相変わらずの不運を発揮してくれたな誰が直すんだよ…きっと俺だよな。

「どうしたんだ数馬?あと大丈夫か?」

「うん僕は大丈夫。それより苗字さんが大変なんだよ…!」

「苗字がどうした!?」

「…行方不明みたいなんだ」

行方不明?苗字が…?頭が真っ白になる。

数馬が他にも説明してるが全然頭が入らない。

「…くそっ!」

思考が復活するよりも先に身体が動いた。

襖が壊れた部屋を飛び出る。数馬が何か言ってるがよく分からない。学園の外に出ようとした所で苗字がどこでいなくなったか聞いていない事に気付いた。戻って数馬に聞き直すのもじれったい。

そうだ!

「小松田さん!苗字がどこ行ったか聞いてないですか?」

サインを書きながら小松田さんに聞く。世間話で苗字が小松田さんに行き先を聞いていたらと思ったからだ。

「名前ちゃん?確か友達と団子屋に行くって言ってたよ」

「団子屋ですね。ありがとうございます!」

団子屋までの道を頭の中で浮かべながら俺は走り出した。

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