小説 | ナノ

毎朝の光景その1


私の朝の日課はさっちゃんを起こすことから始まります。

「さっちゃん!朝だよ!」

さっちゃんこと左門の家と私の家はお隣りさん同士だから自分の家のようにお互いの家に入っても怒られない。

今日も普通にさっちゃん家に入っておばさんにおはようございますって挨拶してさっちゃんを起こすためにドアをどんどん叩く。

さっちゃんを起こすのは私の役割だ。

「僕は寝ていない!」

どんどん叩いてたらドアの向こうから大きな声。寝ていないと言ってるけどこれは寝言だ。

すぐに起きたらおばさんはさっちゃんを起こす事を私に頼むはずない。

仕方ないとドアを開ける。案の定部屋の主はベッドの中にいた。

「さっちゃん!」

目標を定めてベッドに飛び込み、布団越しのさっちゃんの体に着地。

ぐえっと蛙が潰れたようなうめき声。だってこうでもしないとさっちゃんは起きてくれないんだよ。

「さっちゃん起きた?」

やっと目を開けたさっちゃんに声をかける。

寝起きでぼんやりとさっちゃんだけど二、三回瞬きをして覚醒した眼が私を認識する。

「ああ、起きたぞ。相変わらず酷い起こし方だな名前」

「こうでもしないと起きないのがさっちゃんが悪い!」

「内蔵出るくらい痛いんだぞ。いつか内蔵が出たら名前のせいだ」

「そうなる前にさっちゃんが起きる努力しなさい」

文句を言ってるさっちゃんだけどニコニコ笑っている。

これも毎回の光景。なんでさっちゃんが嬉しそうにするのか私には謎だ。

「名前おはよう」

さっきまでさらにニコニコと嬉しそうな笑顔で挨拶してくれる。

「さっちゃんおはよう!」

だから私も笑顔で挨拶するんだ!

prev / next
[ back to top ]