小説 | ナノ

例えていうなら


念入りに髪を梳く。化粧も完璧に施す。こんなに真面目にするなんて授業でもしたことがない。まだ夜が明けてない頃からそんな事をしていたら同室の子が「デート?」と聞かれたりしたが全力で否定した。断じて違う。身支度を完璧にするのはあの方に文句言われるからだ。それにもしデートとあの方の耳に入ったら私の命はない。

何回も身嗜みをチェックしてこれなら大丈夫だろって自分に納得した所で待ち合わせの正門へダッシュ。

あの方はすでに正門にいらっしゃった。

「遅い」

「ごめんなさい!すいません!申し訳ありません仙蔵さん!」

頭をおもいっきり下げて謝る。

「私より遅く来るとは覚悟は出来てるか?」

「すいません!私に出来る範囲の事ならなんでもしますから許してください!」

「ほう…なんでもか、いいだろう」

私の提案に満足そうな仙蔵さん。あ、自分で変なフラグ作っちゃった…。せめて疲れない事だったらいいなと祈るしかない。

「何をぼーっとしてる。早く行くぞ」

「は、はい」

仙蔵さんは待ってる間に手続きを終えたのか先に門出て行く。私も慌てて小松田さんの帳簿にサインする。

「今日は立花君とデート?」

「違いますよ。私はただのお供です」

「え、違うの?てっきり二人は恋人同士かなって思ったんだけど」

「全然違いますよ」

私と彼は恋人ではない。例えるなら…

「教祖様と信者みたいなものですよ」

私の答えに小松田さんは変な顔をしていた。

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