小説 | ナノ

サボり少女と保健室

「平和だな」

湯呑を傾ける。あーお茶が美味しい。

学園長のお使いもなくて静かだしのんびりと過ごせることはいいことだ。

「そうだね平和が一番だ」

薬を調合していた伊作が相打ちを打つ。

ここは保健室。不運委員会委員長もとい保健委員会委員長と呼ばれる善法寺伊作とはちょっとした縁で知り合った仲だ。

不運委員がいると言われる保健室に来る人は少ないし薬品の匂いも慣れてしまえば気にならなくなって快適なまったり出来るお気に入りのスペースだ。

くのたま仲間にそんな事言えば不運が移るよと言われるが私的にはまさに住めば都な心境だ。…住んでないけど。
お茶をもう一口。あー美味しい。
「ところで名前ちゃん」

調合をすることを止めた伊作が顔を上げてこっちを向いた。

「何?」

「授業はどうしたの?」

「…そういう伊作はどうなの授業?」

気付かれた。伊作の言う通り今は授業中だ。

「今日の僕らの授業は終わったよ。…名前ちゃんはまたサボったね?」

笑っているけど目が笑っていない。笑顔が怖いです伊作さん。

「いつも頑張ってるからたまには休みたくてですね…」

いつもは使わない敬語を使い言い訳をする。私のクラスは授業中だ。確か座学の授業だったかな。

「名前ちゃん?」

「…ごめんなさい」

「あまり授業サボってここで休んでたら出入り禁止にするからね」

「そ、それだけはご勘弁をお代官様伊作様…っ!」

こんないいサボ…憩いの場所を出入り禁止になったらすっごく困る!死活問題もいいところだ。

慌てる私の姿が可笑しかったのかさっきとは違いくすくすと笑う伊作。

「伊作ー笑うことないじゃん」

「ごめんごめんつい。名前ちゃんがこんなにここを好きなんだね」

「だって居心地いいからさ」

「それは光栄だ。いつでも歓迎するよ。ただし授業は出ることいいね」

「う…はい」


やっぱり伊作の笑顔は怖かった。

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