ゆきみちで
ある雪が降っている日のことです。朧さんは学校からの帰り道マフラーとコートだけの装備でした。数日前はそれでしのげていましたが今日は一段と寒い日。さすがの朧さんも早く帰って温まりたいと思っていると、前方から雪と同じ白を纏った小さな体が駆けてきました。
「おねーちゃん!!」
その子は朧さんをお姉ちゃん慕っている凜ちゃんでした。全力で朧さんの元へ走ってきたのですが息は一切乱れていません。さすが七松さんの娘でしょうか。
今日の凜ちゃんは、白の猫耳がついたニットの帽子、後ろに猫の尻尾のような細いものがついた白のポンチョを着ています。手には猫の手の手袋と全部猫モチーフのアイテムです。
「おねーちゃんみてみてねこちゃん!」
にゃっと猫のようなポーズを凛ちゃんはしました。
「凜ちゃん可愛いね。中在家さんに作ってもらったの?」
「うん!ちょうじにつくってもらったの。あ、あのね、おねーちゃんのぶんもつくってもらえるようにちょうじにたのもうか?」
「……ありがと。けど中在家さん忙しそうだから凜ちゃんの言葉だけで充分だよ」
小さな凜ちゃんがしているアイテムを自分がつけたらと一瞬想像して駄目だと朧さんは思いました。
「えーねこおねーちゃんかわいいとおもうのに……」
しょんぼりする凜ちゃん。俯いてしまったので猫耳が垂れ下がってるように見えて可愛いと朧さんは思いました。
「その代わり凜ちゃん私の家で一緒に遊んでくれないかな?」
凜ちゃんのご機嫌を回復させるために朧さんがそう言えば凜ちゃんは勢いよく顔を上げました。
「あそぶあそぶ!はやくおうちいこうおねーちゃん」
すぐにご機嫌が回復して元気に走って先に行く凜ちゃん。
「凜ちゃんあんまり走ってるとこけちゃうよ」
凜ちゃんを追いかけるために早歩きになる朧さんの顔は僅かに笑っていました。
(おわり)
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