夢小説 | ナノ


武装が解ける

「おとうさんこっちこないで!」

仕事から帰ったらいつも出迎えてくれるはずの娘がいない。

おかしいと思ったけど、テレビでも見てんのかと思い居間に行けば予想通りテレビを見ていた娘がいて抱き抱えようとしたらそれに気付いた娘から初めて拒絶された。

「おとうさんおつかれさま」と言って仕事から帰ってくる度に抱き着いてくれるのが俺の癒しやったのに…

俺が一歩近づけば娘は一歩下がる。近付いたらいややと首を横振って涙目になってまで拒否してる。

目に入れても痛くない可愛い可愛い愛娘に拒絶されたのがショックでこっちまで泣きそうだ。

「なあ何があったんや?」

俺達の様子を近くで見てながら苦笑いしていた妻に聞いてみる。というか笑っとらんと助けてくれ…。

「今日遠山君が来て何か言ったらしいのよね」

「金ちゃんが何て言ったん?」

「さあ…私その時ちょうどいなかったから分からないの」

「そうか」

あのゴンタクレ俺の娘に何を言ってくれたんや。

「なあ金ちゃんから何か言われたんか?」

近付いて泣かれたりはしたくない(泣かれたら俺がち立ち直れない)ので少し離れた距離で聞く。

「おとうさんのてはどくしゅでさわったらあぶないんやってきんちゃんおじさんがいってたもん!」

昔の事を引っ張り出して…。今度会う時は覚悟しときや金ちゃんと心の中で呟く。


「ちゃうちゃうお父さんの手は毒手やないで」

ほらと手を振りながら娘の目の前に出す。

それでも娘は信じてはくれないようでまた首を振った。

「きんちゃんおじさんうそつかないもん!」

頑固な所は誰に似たのか…。あと何で金ちゃんにこんなに懐いているんや…。

悩んでいると妻が娘の名前を呼んだ。

「お父さんは今毒手を休業中なのよ」

「そ、そうそう今は休業中や。そうじゃないと抱っことかできんやろ?」

妻が味方についたおかげか娘の態度も軟化してきた。

「毒手を持ってるお父さん嫌いか…?」

あともうひと押しだと思い俺がそう言うと娘が抱き着いてきた。

「おとうさんだいすきだよ!!こわがってごめんなさい!!」

泣き出した娘を妻となだめながら嫌われなくてよかったと俺は安堵した。



武装が解ける


end


彼と私は家族です。様に提出しました

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