みかん箱 | ナノ

みかん箱


 夏戦争 (10/08)


「どっか行っちゃうの?」
侘助が門を出ようとするときに太助の娘である○○だった。
「…ああ」
出かけるのではなく家を出ていくつもりな侘助は答える。
「○○もついて行く」
侘助が彼女を見ると彼女がお気に入りだと言っていたオレンジ色のリュックを背負っていた。まるで侘助が家を出ていくのが分かっているかのようだ。
「遠いとこ行くんだよ。お前にはまだ早い」
「私もう11歳になったよ」
「まだまだガキだろ」
納得していない○○に侘助は内心溜め息をつく。自分は財産の持ち逃げして家を出るのだ。それに○○を連れていけば誘拐なんて言われるだろう。
「子どもなのは侘助さんだよ。わたし侘助さんの保護者だもん」
「…普通俺がお前の保護者だろうが」
えっへんと威張る彼女に頭が痛くなった。


[back]