みかん箱 | ナノ

みかん箱


 K (10/08)


「伏見くんこれ何か分かる?」彼女がどこからか取り出したのは伏見も知っているよくあるチョコレート菓子だ。
「…菓子ですよね」
「正解。一つどうぞ」
開けた箱を伏見に差し出す。
「いらないです」
「遠慮しないでよ。今日はこのお菓子の日なんだから食べなよ」
伏見に勧めながら彼女はお菓子をポリポリ食べる。伏見には拒否権はないようなものだ。甘いものはそんなに得意ではない伏見はチッと舌打ちする。けど、少し考え込む。
「伏見くん?」
「…能力使わないでくださいね」
そう念を押してから伏見は彼女に、正解には彼女がくわえていたお菓子に顔を近付けた。彼女がくわえていない方を噛み進める伏見。急なことで固まっていた彼女だったが、伏見がやっている意味に気付いた彼女の様子が変わる。普段の飄々とした雰囲気とは違い、驚いたような恥ずかしがるような表情をしている。それを見た伏見は満足そうに微笑みわざとお菓子を折った。
「これで良いでしょう。ご馳走さまです」


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