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みかん箱


 ペルソナ (10/08)


番長→鳴上悠(なるかみゆう)

キタロー→狭霧夜海(さぎりよみ)
キタローだけマイ設定の名前になっています



「気がついた?」
揺すられて目を開ければ狭霧がいた。
「…夜海くん?」
一呼吸おいて××は彼の名前を呼んだ。一回ためなければ彼のことを兄だと呼んでしまいそうで怖いからだ。
「怪我はない?」
「うん。それよりここはどこ?みんなは?」
辺りを見渡すと狭霧以外の仲間はおらず仲間はさっきまでとは違う晴れやかな一本道があるだけ。道中にあった質問部屋に似たような雰囲気を感じる。
「僕らが落ちる前のこと覚える?」
狭霧から言われて落ちる前のことを思い出す。最後の質問をリーダーである狭霧が答え結果が発表されたのだ。
「私が運命の人に選べばれたんだよね?」
××が狭霧の運命の人に選ばれた。仲間達は意外だと言われ千朝自身は複雑な心境を抱いてしまった。
「それで急に足元が落ちて…」
「びっくりしたね」
「そんな風には見えないけど」
淡々と言う狭霧に驚いた様子はない。
(まあこの人なら仕方ないかな)
「どうやらたどり着いてしまったようだ」
機械音声が空間に響く。
「っ!?」
いきなりだったので体がはねて驚く××。
「驚きすぎ」
それを見て狭霧が笑う。
「笑わないでよ…」
「ごめんごめん」
××が睨んでも悪びれる様子もなく狭霧は謝る。機械音声はそんなやり取りを気にせず、先を続ける。
「ここは運命の相手と巡り合った恋人達が愛を語る道のようだ。この先には一体何が待ち受けてるのだろう。手と手を取り合い、好奇心と恐れを胸に足を踏み出してもいいし、踏み出さなくてもいい」
(恋人!?この人と私が…?)
××は狭霧をちらりと見る。
「足を踏み出してもいいし、踏み出さなくてもいい。と言っているぞ。さあ足を踏み出したまえ!」
声は聞こえなくなった。
「恋人になっちゃう?」
狭霧の言葉に××は一瞬固まる。
「好きなんだ××」
告白。これが自分以外の女子だったら照れたりするシーンだと××は他人事のように思った。狭霧の感情を表に出さない表情は嘘か本気か分からない。けど××には分かる。肉親だから分かった。
「…冗談は止めよ?」
「バレた?」
狭霧は肩をすくめる。
「けど好きなのは本当だよ」
さっきとは違う思いが込められているようで、××はさっきの告白より動揺した。
「…一つの賭けだったんだ」
狭霧は××を見て淡々と続ける。
「この運命の人探す質問、面倒で適当に答えてようかなって思ったけど、せっかくだからある子のこと考えて答えてたんだ。もしその子が選ばれたら二人っきりの時に言いたかったことを言おうって決めたんだ…そして僕は賭けに勝った」
狭霧の言葉に××は段々逃げ出したくなる。これ以上先を聞きたくない。だが、狭霧は先を進める。
「××…君は僕の妹だよね」
確信を持った言葉。自分が気付いて彼が気付いていないわけがなかった。観念しなければいけない。
「そうだよ…お兄ちゃん」




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