九条家の1日 | ナノ


こどもの日

 朝から空がソワソワと落ち着きがない。そう思った時だった。


「ぱぱ!もんだい!きょうはなんのひでしょうか!」

 リビングでボクの膝の上でテレビを観ていた空が急にボクの方を見上げて問いかけてきた。


「……こどもの日」
「ぴんぽん!じゃあぼくをたかいたかいして!」

 今日は5月5日。こどもの日だ。だからきっとテンションが高いんだろう。とはいえ、こどもの日と高い高いがどう関係するのか。そう思いながらも息子の希望に沿って脇を抱えて持ち上げる、がーー

「もっとたかい」
「……はい」
「もっと!」
「無理」

 空は高く高く、とどんどん要求してきた。腕を限界まで伸ばしても「もっと」と言われてもこれ以上上がらない。ひとまず空を胸元まで下ろすが、そんな空はむっと頬を膨らませている。そんなに高く出来なかったからって怒ることないのに。
 そう思っていると空がボクの目を見て話し出す。


「きょうはこどものひだからやねよりたかくして!!」
「え」
「やねよりたかくしてこいのぼりみるの!」

 ふん、とややふてくされて言う空だったが、なんかいろいろ混ざってないか。こいのぼりの歌と高い高いは関係ないじゃない。

「…高いところで鯉のぼり見たいの?」
「うん」
「じゃあお出かけしよっか」


 それでもそう言った空の言うことをできるだけ聞いてあげたいと思うのはきっとボクは親バカなのだろう。
リビングにいるひなにも伝え、3人で出かけることにした。





「わー!すごい!たかい!!」


 空がやりたかったことはいろいろ混ざっていたけれど、要するに高いところで鯉のぼりが見たい、とのことだったので上から鯉のぼりの見える展望台まで連れてきた。今の時期はイベントでタワーに鯉のぼりが飾られているため、高い位置から見ることが出来るのだ。
 なんだかんだ空が物心ついてからは初めて展望台に連れてきたような気がする。目を輝かせて窓に手をつけ外を見ている空はとても感動しているようだ。

「鯉のぼり見える?」
「うん!あれ!」

 展望台から見えるたくさんの鯉のぼりを見て、満面の笑みで答える。そんな空に思わずボクも笑みがこぼれた。


「こうしたらもっと見えるよ」
「わっ」
「ほら、どう?」

 そんな空がさらに見えるようにと思い、立っているところをひょいと抱き上げた。胸元まで抱き上げ、窓ガラスへと近づける。


「わぁあ〜こいのぼりおよいでる…!うみきらきらしてる…!」


 抱き上げると視界が高くなったからか、更に興奮し出す。最初は景色に魅入っていたが、徐々に「おそら、ちかい!」、「ぼくのおうちは?」などと展望台から見える鯉のぼり以外のもの興味を示している様子。
 
 そんな空に都度答えながら一緒に景色を見て、休日を満喫したのだった。





「おなか、すいた……」
「ご飯食べようか。近くのご飯屋さんで鯉のぼりのお子様ランチあったよ」
「たべる!まま!ぱぱ!つれてって!」
「はいはい」

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