▼ 不器用な幼なじみ1
※モブクラスメイトがいます。名前は高山くん。
学校が終わり、天と一緒に帰っている時だった。
ピロリン
ポケットに入れていた携帯から通知音が鳴ったのだ。誰かからのメッセージだ。私はすぐに確認する。
「誰?」
「んー、同じクラスの人」
相手は同じクラスの高山くんからだった。
「……男?」
「うん」
「……ふーん」
すると隣を歩いている天が反応したのが分かった。天は面白くなさそうな、不機嫌そうな声を出したと思ったら、なんと私の携帯を取り上げたのだ。
「ちょっと天! なにするの!」
携帯を取った天はスタスタとさっきより速く歩く。
待ってよ天。それは私の携帯だよ。
「ねえ返してよ! まだ内容ちゃんと読んでないんだから!」
「ボクが読んであげる。『今度一緒にご飯行こう』だって」
「ご飯? 遊びのお誘いかな。返事するから返して!」
いつも仲良くしてる友達同士で遊ぼう! みたいなノリだろう。「行こうね、誰誘うー?」……そう返信したいものの、携帯は目の前の男に取られているため返信ができない。取り返そうとしているのに、その度にひょいひょい避けられて結局取り返せずにいた。終いには片手で私の防いで、もう片手で私の携帯をいじり出した。
「天、何してるの……!?」
防がれつつもチラッと携帯画面を見ると、スライドして何かをやっている。トーク画面の一部が赤く見えている。あれ、それって削除ボタンでは……え、削除?
「はい、返してあげる」
そう言って少し満足そうに笑って天は私の携帯を差し出した。いやいや待って。なにしてるのこの人。
「勝手に何してるの!」
「ちょっとうるさいよ」
「うるさいって天のせいでしょ! 何でこんなことするの……」
全く、なんてことをしてくれたんだ。せっかくの遊びのお誘いが台無しだ。
「……天のばか」
携帯を握り締めながらボソッと小さな声で私は言った。一応念の為に消えてないかをちゃんと確認しようと、友達画面を開くけれど、それもまた天に取られてしまった。
「っ、返してってば……!」
携帯を取られ、先に歩く天を追いかけると、天がピタッと立ち止まる。
「そんなにそいつと遊びたいの?」
「え?」
そして静かな声でそう言ってきた。
「……遊びのお誘いは誰だって嬉しいでしょ! グループで遊んで何が悪いの?」
自分で言ってて改めてそう思う。なんで天にそんなこと言われなきゃいけないんだ。なんで天にトークを消されなきゃならないんだ。この理不尽な幼なじみに対し、私は心の中でため息をつきながら歩き、ようやく天に追いついた。
「誘いがグループじゃなくて2人きりだったらどうするつもりなの」
「2人なら……まぁ別にそんな気にしなくて遊ぶけど」
「はぁ……」
天はひとつため息をついた後、私の方を向いて話し出した。
「これからボク以外の男と2人で出かけるの禁止」
「……はい?」
耳を疑った。どうしてそんなことを言うんだこの男は。呆然と立ち尽くしている私の手に携帯を持たせ、そして天はもう一度私に背を向ける。
「ご飯に行きたいならボクがいつでも行ってあげるから」
「!」
背を向けながら、天らしくない言葉を言ってきたんだ。
「……じゃあね」
「、え」
気づけばいつの間にか家の前に着いていて、天はそれだけ言い残し、またスタスタと歩き始めたんだ。
「……変なの」
なんだ、ほんとに天はどうしたんだ。どうしてあんなこと言ったんだろう。何か変なもの食べたのかってくらいなんだかおかしいよ。
ドクン、ドクン
さっきのことを考えるとちょっとだけ心臓が早く動いているような気がした。頬も熱くなっている気がする。
「早く気付いてよ……バカ」
そんなことを天が言ってるなんて私には分かるはずもなく、私は遠くなる天の背中を見つめることしかなかったんだ。
「おはよう! ごめんね、昨日返事しようと思ったら間違えて消しちゃったの」
「いやいや大丈夫! それでその……ご飯どう、かな?」
「うん、誰誘う?」
「あ、いやその2人でって送ったんだけど……」
「あれ? そうだったの? うーん、2人は、その…」
「い、いや! みんなで行こう! ね! (九条が廊下でこっち見てやがる…!)」
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