3Z



金曜日の帰り際に口喧嘩をした。
土曜と日曜は学校が休みだから、外を出歩かなければ会うことはないと思い家に篭った。



月曜日。喧嘩してから4日目。
顔を会わせたくないという理由で学校を休む訳にもいかず、渋々学校へ行った。

教室に入って自分の席に着く。
カバンはあるのにチャイムが鳴っても隣の席にいない沖田が気になって斜め前の席のマヨラーに話し掛けようとしてやめた。


今は喧嘩してるんだもん。別に沖田がどこに居ようが私には関係ない。
よく一緒にいるくらい仲が良かったって、今回ばかりは許せない。



SHR中にガラッと扉が開く音がして皆がいっせいに見た。もちろん、私も。

ドアに立っていたのは、私の隣の席で只今絶賛喧嘩中の沖田だった。
一瞬、目が合ったがすぐに逸らした。


「沖田くーん、チャイム鳴ったら席に着いてようね」

「‥すいやせん」


一段とドスの効いた低い声で言う。
いつもと違うと感じたのかクラスの雰囲気が重くなった。


(沖田がそうなら私だって!)



それから気まずい空気のまま放課後になった。
もちろん言葉なんて交わさず。


***


そのまま私たちが目も合わさなければ、言葉を交わさない日経った6日目。

正直、こんなに長く喧嘩が続くとは思わなかった。
二人仲良く遅刻したり、屋上でサボったり、一緒に補習受けたり、他愛もない話をしていたのに。
この喧嘩中だって、何度沖田に話しかけそうなっただろう。


素直に謝ればきっと元通りになるはず。
でも、私にそんな勇気は持ち合わせていない。
溜め息ばかりが出る。

そんな私を見兼ねたのか帰りに姐御に呼び止められた。


「神楽ちゃん、最近沖田さんと一緒にいないのね?」

「あー‥うん、それがどうかしたアル?」


姐御の真っ直ぐ見る瞳は私の心の中を見透かされているようで、少しだけ怖い。


「うーん‥神楽ちゃん寂しそうだからね?ちょっと心配になったのよ」

「別に、一緒にいなくても‥‥‥」

「平気なの?それならいいんだけど‥‥‥素直にならなきゃこのままよ?」


姐御は優しく言った後、一緒に帰りましょう?と言ってくれたが私は断った。
姐御は私が一人になりたいのを察してくれたのか静かに教室を出て行った。


いつの間にか教室に夕日が差し込んでいて綺麗だった。


(明日、沖田に言ってみよう)


***


ここ数日は部活動に励んでいる。
まぁ、一応エースだし?

それに、むしゃくしゃしてるときは剣道やってれば少しは忘れられる。



部活動が終わり、部室で着替えて外に出ると土方がいた。


「何でいるんですかィ」

「聞きたいことがあってよ。…っていうか、皆が聞けって」


仕方なく聞いてみた。
早く帰りたいっつーのに。


「あー‥なんて言えばいいんだ?お前等最近変じゃねぇか?喧嘩でもしたのか?」


お前等…っつーことは、俺とチャイナのことか。めんどくせぇ。


「‥別に変じゃねェよ」

「いや、変だろ。一緒にいないどころか、喋んねぇし。とにかく、どうにかしろ。あの空気にいつまで俺達は堪えりゃいいんだよ。早く素直になれよ」


土方はそれだけ言うとそさくさと帰って行った。


雲一つない夜空を見上げて深い溜め息を吐いた。
分かってるんだ。
素直に謝ればいいんだってことくらい。

俺だってそろそろ限界がきているんだ。
チャイナと喋ったり、喧嘩したりする楽しみがない日々なんて。


あーあ、いつの間に俺の中にチャイナは入り込んだんだろう。


***


沖田と喧嘩してから一週間の木曜日の昼休み。
私は姐御たちとお弁当を食べ終えて今はお喋りに夢中‥‥‥っていうわけでなく、沖田たちを横目で見ては溜め息ばかり吐いていた。



あーあ、沖田がゴリラとマヨラーと話しているだけでも羨ましく思う。
こちとら一週間目も合わせなければ喋ってないのに。
なんだかんだで一緒にいたのに。



私の中でそんなに沖田の存在が大きくなっていたなんて、今さら気付いたってどうしたらいいか分かんない。



姐御たちの話に相槌をして、もう一度見た。



‥‥‥あ、目合った。



なんだか時間が止まった感覚に陥る。
しかし、沖田がふいっと目を逸らしたことで現実に引き戻された。


その時、私の中で何かが動いた。





「‥っ、もう嫌アル!!!」


私は勢いよく立ち上がり沖田を睨みつけた。


「まだ怒ってるアルか?!何で目逸らしたアルか!」


そう言いながら沖田の真っ正面に来た。


(真っ正面から見るの久しぶりアル‥この距離も)


「‥てめぇだって、目逸らしただろ。同じことをしただけでさァ」

「だって‥‥‥あーもう!ごめんアル、私が悪かったネ」


あれだけ言えないと思っていたことが言えた。
沖田はいつものポーカーフェースを崩して驚いている。
でも、どこか辛そうな切羽詰まった表情をしていた。


「‥‥‥何で、泣いてんだよ」


言われて気付いた。
いつの間にか私はボロボロと涙を零していた。


「‥‥もう嫌、沖田と喧嘩したままは嫌アル!つまんないヨ、楽しくないアル」


少しだけ心が軽くなった。
言いたいことが言えたから。


「俺も、ここ数日楽しくなかった。‥‥‥俺も、悪かったでさァ。だから、あんまり泣くなよ」


ふいに頬に沖田の指が触れた。
触れたところが熱い。
何これ、すっごい胸がきゅーって締め付けられて痛い。でも嫌な痛みじゃない。



されるままになっていると私たちの近くで咳ばらいが聞こえた。
驚いて見ると銀八先生がいた。


あ、あれ?何で…?そういえば、今って…?


「やっと仲直りしたの?もう現国の時間だからねー」

「‥先生、今いいとこなんで邪魔しないで下せぇ」

「いやいや、もう授業に入ってるから席に着いて?っていうか、沖田くんそろそろ素直になったら?」

「‥‥‥後でジャンプ燃やしてやりまさァ」

「えええぇぇっ?!ちょ、それだけはやめて!いや、まじで!」


私そっちのけで話している二人を黙って見ていると、視線に気付いたのか沖田が私を見た。
にやりと笑ったと思うと私の右手が絡め取られた。


「せんせー!俺、ちょいと素直になってくるんで現国はサボります。行くぜィ、チャイナ!」


沖田は銀八先生にそう行って、教室を出て走った。もちろん、私も。
教室から先生が何やら叫んでいたが私も沖田も気にしない。



走りながら沖田は私に言った。


「‥土曜日、二人だけでどっか行かねぇ?」


休日に二人だけって初めてかも。これって…?

「それは、俗にいうデートのお誘いアルか?」


繋いでいた手がさらに強く握られた。
驚いて沖田を見ると優しい笑みをしていた。


「‥もちろん、デートのお誘いだけど?」


私は笑って答えた。


「いいヨ、沖田と一緒なら!」


その返事に沖田も笑った。
走って走って私たちがよくサボる屋上に着いた。


空が青くて気持ち良かった。
長かった一週間がやっと終わった。


嘩week



おまけ


「SHR始めっぞー!沖田くんと神楽いるー?」

「ただいまヨー!」

「あ、そういや二人って何で喧嘩してたの?」


一瞬で静かになった。
もちろんクラス全員が気になっていたことだから。


二人が顔を見合わせて気まずそうに口を開いた。


「‥‥‥放課後、沖田はゲーセンがいいって言うから」

「‥チャイナはカラオケがいいって言うから」

「‥‥‥はっ?!」

「だから、俺はゲーセンに行きたくてチャイナはカラオケに行きたくて、どっちに行くかで喧嘩したんでさァ」


クラス全員深い溜め息を吐いた。
そんな理由の喧嘩に振り回されたなんて。


「‥まぁ、うん。仲直りしたならいいや。それに沖田くん素直になるみたいだし?喧嘩も減る‥‥‥って、おい!何してんのぉぉおおお?!」


いつの間にか取っ組み合いをしている二人にまた溜め息を吐いた。


「‥だ、だって!沖田がっ‥ほ、ほっぺに、き、きき、キスするからっ‥!」

「ほっぺにちゅーぐらいで照れんなって。‥あ、土曜日は口にしてやろうか?」

「ぎゃー!!た、助けてっ!ヘルスミー!」





片無様に相互文を捧げます。
まず、遅くなってすみません(´pωq`)
リクエストに添えられてないような?それにおまけが無駄に長い…
あ、付き合っていない設定になっています。

こんなもので良ければどうぞ><
片無様、相互ありがとうございます!そしてよろしくお願いします!

2010.09.07
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