ドキン、ドキン…。

目頭がなんだか熱くて、妙に脈を打っている気がする。

私の中で緊張、羞恥、気まずさ、全てがミックス定食…いや、複雑に混ざり合った。

こんな気持ちは生まれて初めてだ。

虎丸君……。

そっと彼の顔色を窺うように見ると、虎丸君は笑っていた。


「10年間、付き合って初めてですね!名前さんがそうやって言ってくれたのは。俺やっぱり名前さんが大好きです」


目は弧を描き、口角を大きく吊り上げ満面の笑みを浮かべそして一瞬の内に私との距離を縮めたと思ったら、私の視界いっぱいに虎丸君が映された。

あれ、これってまさか―――

唇には蕩けてしまいそうなくらいの熱が生まれ、そこから全身へと熱は広がっていく。

とても幸せな温かさだった。

接吻を交わし合っていることを理解した時にはすでに私は目を瞑っていて、どちらからでもなく舌を絡めていた。

何度経験しても慣れることのないそれは、まず私の脳をおかしくしていく。


「ふっ……ぁ」


いつの間にか虎丸君の左腕は私の背中に回っていてきっちりと彼の中へと収められていて、右手は後頭部を押さえていた。

角度を変えて何度も何度も行われる行為に、思わず快楽の声が塞がれた唇の隙間から洩れていく。

なんとなく、それを聞く度に虎丸君の舌の動きが激しくなっているような気がする…なんてぼんやりと考えながら、私たちはしばらくこの時間を楽しんだ。



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