しゃらん、首についたチョーカーが涼やかな音をたてた。

なまえは濡れそぼった髪をぐしゃぐしゃと乱暴にバスタオルで拭い、それを肩にかける。

薄暗い家の中、脱衣場だけに灯った蛍光灯だけがぼんやりと光を放っていた。

ひんやりと首元のチョーカーが冷気を帯びる。
ほぼ金属で出来たこのチョーカーは温度に敏感だ。


「錆びちゃう」


外せば楽に拭けるというのになまえはそうしなかった。

このチョーカーをプレゼントした相手が、チョーカーを外す事をこの上なく嫌がるのだ。
なまえの恋人であるその男は極めて独占欲の強い人間だった。

ザァァアァ


五月雨が音をたてて降り注いでいる。
雨音の中で玄関の戸がバタンと大きな音を立てた。
次いで聞こえてきたのは荒々しく廊下を歩く音。

なまえはぼんやりと音の主が現れるであろう方向を見やった。

「なまえ……」


現れた男、三成はずぶ濡れだった。

雨に濡れる事を嫌う癖に、三成は傘を差す事をしない。

濡れて乱れた前髪が酷く鬱陶しそうで、なまえはその前髪を払ってやった。


「風邪、ひくよ」


いつもと違い、揺れる瞳を覗きこむと三成はなまえを乱暴に掻き抱いた。

素肌に触れる三成の濡れた体が、じんわりとなまえの素肌を浸食する。


「…どうしたの」

「………」


三成はただひしり、と抱きつくだけで何も言わなかった。

珍しく荒い呼吸が首筋を撫でる。



しばらくそうしていたのだが、一向に三成が離れる気配はない。

段々なまえも寒さを感じてきた。
鼻がむずむずとして、くしゃみが出そうになるのを必死にこらえる。

こらえずにくしゃみをしてしまえば、おそらく三成は離れてしまうだろう。

それは少し残念だ。


だが、我慢出来る筈もなく。


「…っくしゅ」


押し殺した小さなくしゃみではあったが、ぴったりとくっついていた三成にはやはり聞こえていたらしい。
勢いよくなまえの体を引き剥がすと、素早く横抱きにした。


「み、三成?」

「貴様が風邪を引くのは本望ではない、風呂に入り直せ。私も後から入る」


三成はそれだけ言うと、なまえを浴槽に入れた。
そして、肩までつけさせると、そのまま出て行ってしまった。


じわじわと暖かさを取り戻す体を見て気づく。


わたし、服着てなかった…。


一瞬にして顔が赤らむのを感じて、なまえは照れ隠しに湯船に身を沈めた。



――――――――
うさぎ様リクエストで「しんみりした話」
しんみり、ですかね…?
なんだかリクエストに添えていない気がしていますが…←

リクエストありがとうございました(`・ω・´)









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