ヤバいヤバいヤバい!

なまえは大学からの帰途を全速力で走っていた。
チラリと見た腕時計は、9時を指そうとしている。

いつもならばすでに夕飯を食べている時間だ。
いや、それどころか食べ終わっている時間かもしれない。
どちらでもいい、となまえは思った。

どちらにせよ、三成はもう烈火のごとく怒っているのだろうから。




△▼




家は思っていたよりも静まっていた。
恐る恐る扉を開けた自分が馬鹿なんじゃないか、と自分で思う程だ。


「み、三成ー?」


玄関から名前を呼んでみるが返事は無い。
寝てるのかな、とリビングに足を進めてみれば三成はソファーに座っていた。


「起きてるなら返事くらいしてよ、ただいま。遅くなってごめんね?」

「……………」


チラリとも三成は視線を向けない。
眉間にシワを寄せて黙りこんでいるだけだ。


「三成、怒ってる…?」

「…何故帰りが遅い」


いつもより低いトーンで、こちらを見ずに三成が言う。


「えーと、大学で調べものしてて」「…それだけとは思えん」

「それから家康と教授の話聞いてました、ごめん」


家康、の単語に三成はピクリと反応した。
眉間のシワが増す。


「家康…だと」

「同じ講義とってて…。あれ、言ってなかったっけ?」

「初耳だ、貴様は私に大学の事など話していない。一つもだ」


あ、もしかして、となまえは思った。


「夕餉の時間すら忘れるほど居心地がいいのなら大学で暮らせばいい、私にしてみれば好都合だ」


一つの確信。
なまえは思わず口元を緩めた。
こんな所でにやけてはいけないと思っているのに、にやける口元を抑えられない。


「…何をにやけている」


案の定、三成はご立腹気味だ。


「もしかして三成、ヤキモチ妬いてる?」


三成の目が僅かながら見開かれた。
そしてツイと視線を逸らされる。


「わたしがいなくて寂しかった?よしよし、構ってあげようじゃな、ぶふっ!?」

「それ以上喋ってみろ、窒息死させてやる」


今まで背もたれにしていたらしい抱き枕をなまえの顔に押し付け、三成は言った。


「ちょ、待って!本当に、死んじゃうからっ」

「いっそ死ね、貴様には斬滅する価値も無い」


ぎゅうぎゅうと抱き枕を押し付ける三成の顔は少しだけ、赤らんでいたのだがなまえには見る事が出来なかった。




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神埼藜霧様 相互記念



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