「三成の歓迎会をしよう!」
家康はさも名案だとばかりに両手を叩いて笑った。
その言葉に、三成となまえはげんなりとした顔で家康を見る。
発案者はニコニコと笑うだけだ。
「ちょうど手土産に持ってきた野菜もある事だしな、鍋にしないか?」
「わたし、軽くでいいや。お昼も食べてないし」
「食ってないのか!?」
あまりの迫力に圧倒したなまえは、思わず後退りをした。
「大声を出すな、斬滅されろ」
「酷いな三成。友に言う言葉ではないぞ」
「誰が友だァァア!」
「なら三人で買い物にでも行くか、なあなまえ?」
「え、ああ、うん?」
「貴様、こんな奴に流されるなァ!」
ソファーベットから今にも立ち上がらんばかりの三成の手首をがっしり掴み、家康は意気揚々と立ち上がった。
もちろん、なまえの手首もすでに捕まえている。
「離せ家康ゥゥウゥ!」と叫びながらもがく三成であったが、弱体化している三成の力で適うはずもなく、むなしくも引きずられて行くのであった。
道中三成が暴れたりなどして一悶着あったが、ようやく近くのスーパーまでやってきた。
すでに三成は少ない体力の大半を使い果たしたらしく、ぐったりとしている。
「はぐれるといかんからな、しっかりワシの手を握っておけよ」
「握る、というか握られてる気が…」
「………」
「…三成、生きてる?」
声をかければキッと睨みつけられた。
睨むだけの気力と体力はあるようだ。
「三成、食えないものはあるか?」
「…にんにく」
ぼそりと呟いた三成は少しばつの悪そうな顔をしていた。
なまえはああ、やっぱりかと口に出さずに思った。
「にんにくか、安心してくれ。にんにくはいれん!肉は何が好きだ?」
「…………」
額の皺がグッと寄ってしまった三成を見て、なまえと家康は顔を見合わせた。
「牛さんと豚さん、それに鳥さんだよ?」
「なまえ、三成は子供じゃないぞ」
「う、うるさいな」
なまえは言ってから恥ずかしくなってきた。
「肉は食わん、血の味がする」
「え、血?」
「ああ、吐き気がする血の味だ」
「じゃあ魚はどうだ、三成」
「魚は生臭いだろう」
「………」
「………」
「…何か文句でもあるか」
大量にあるよ、と言いたかったなまえだったが、隣の家康までもが苦笑いをしていたので、大人しくしている事にした。
「椎茸は好きだ」
「し、椎茸かあ!」
「じゃあキノコ鍋にするか!飯は炊き込みご飯にするのなんてどうだ?」
「…悪くない」
微かに嬉しそうに言った三成に、二人は心底安堵する。
「よし、そうとなったらさっさと買い物を済ませてしまおう。行くぞー」
「いやいや、引っ張らないでも迷子にはならないからね家康」
意気揚々と歩き出した家康に引きずられ、三成の機嫌はまたもや急降下を始めた。
買い溜めでもしたのかと思うくらい買いに買った為、にビニール袋ははちきれんばかりにパンパンだ。
それが四袋もあるのだ、なまえはげんなりとした。
「重い物はワシが持っていこう」
サッと一番重い袋を持ってしまった家康に感謝しつつ、気合いを入れてなまえは残り二つを持ち上げようとした。
「おい」
「へ?」
「袋を貸せ」
ああ、三成も持ってくれるのか、となまえは三成に軽い方の袋を差し出した。
「こっちを持ってやると言っている!」
鋭い目を更に吊り上げ、三成は差し出された袋と逆の、重い方の袋をなまえの手から奪い取った。
「ありがとう、三成」
「…ふん」
鼻を鳴らした三成表情が柔らかいように見えたのは、三成の右側にいた家康だけだった。