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なまえは辟易としていた。
泊まりに行こうとしていた家康が、大学に泊まり込みで作業をしなくてはならなくなってしまった為に、泊まりに行く宛が無くなってしまったのだ。

だがしかし、家には帰りにくい。

夕暮れの住宅街をとぼとぼと歩く彼女が顔を上げると、そこには柔らかな微笑みをたたえた青年が立っていた。

通行の邪魔にならないよう、道を空けようとしたなまえに彼は優しく声をかける。


「突然だけど、君には三成君のために協力してもらうよ」


え、と声を上げたなまえの首筋に、青年は目にも止まらぬ速さで牙を突き立てた。










その頃、三成は町内を走り回っていた。
泊まり先と聞いた家康の元になまえを見つけられなかった為だ。

いつもなまえが買い物に行く店、なまえの好きな洋菓子店、大学、思い当たる場所を回りきった時、すでに時刻は夕方になりつつあった。


「うろちょろとどこを彷徨いている…」


気だるい体に鞭打って走り回っていた三成だが、それも限界が近い。
電柱に手をつき荒くなった息を整えていると、ふわりと血の匂いが三成の鼻孔に香った。

それが嗅ぎなれたなまえの血の匂いだと悟った瞬間、三成は今出せる全速力で走り出した。




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