22

なまえは首を傾げた。
いつになく元就がご機嫌なのである。

そういえば今朝から采配を投げつけられるような事はなかったし、安い大福に文句を言う事もなかった。


カチリ、と時計が午後6時を指したその時であった。


「行くぞ」


いつの間にか巨大化していた元就がなまえの手を引いた。


「え、どうして?どこ行くの?」


困惑した様子のなまえの声に、三成がチラリと目線を上げる。


「今日は我が社にて桜祭りが行われる日よ」


「ああ、そういえばもうそんな時期だねえ。行きたいの?」


「早に準備をしろ、我を待たせるつもりか」


行きたい、とは素直に言わない元就に内心可愛い奴と感想を抱いたままなまえは三成を見る。

日陰から一向に動かない三成は、今日も顔が青白い。


「みーきゅるるるん」

「気色が悪い、黙れ散れ」

「お祭り行こー!綿あめ買ってあげるからさぁ」

「甘い、いらん」

「糖分なめんな!」


三成がどうしても首を縦に振らないので、なまえは唇を尖らせた。


「じゃあ、元就と家康と行くからいいやい。みーきゅるるるんなんか家に引きこもりすぎてキノコ生えればいいんだ」

「家康、だと…?」


あ、ヤバい。
なまえが思った時にはすでに手遅れであった。


「家康のみが店屋物を満喫するなど認可するものかァァアアァッ!」




「行くぞなまえ!ぐずぐずするなッ」

「え、あの、え?」

「石田、いの一番に社へ踏み込むのは我よ。分かっておるな」

「勝手にしろ、私は家康を阻止出来れば何も望まないッ!」


そういう事になった。





後編に続きます





prev next



第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -