「この状況ってさ」
なまえはぼうっと机を見やる。
そこには三成と元就が机を囲んでいて、炒り豆を黙々と口に運んでいた。
パリパリと音が鳴り止まないのは十中八九、彼らの所為である。
「カオスだよねえ」
「…貴様、何が言いたい」
「言いたい事があるなら申してみよ」
ギロリ、見すくめられなまえは慌てて弁明する。
「鬼は外、福は内。って言うでしょ?今はほら、神様である元就も吸血鬼、つまり鬼の三成も家にいるじゃん」
なまえの言葉に二人は目を合わせる。
そして意地悪く元就が笑った。
「石田、貴様は鬼らしく外へ行け」
対する三成はふん、と鼻を鳴らした。
「ここは先に鬼を招いた、貴様が出ていけ」
バチバチと飛び散る火花が見えた気がして、なまえはため息をついた。
それにしても、何で二人はあんなに炒り豆食べてるんだろ。
机に盛られた炒り豆は山を成している。
なまえは首を傾げた。
「二人って何歳なの?」
言い合いをやめたかと思えばいきなり黙り込んだ二人に、なまえは更に首を傾げる。
「…知らん」
「知らぬ方が懸命よ。忘れたか、我が神の遣いという事を」
知らないと言った三成に、少し自慢気な元就。
三成は眉間の皺が増え、機嫌が悪そうだ。
「三成、そんなに食べなくても…」
「煩い、私の勝手だ。口を挟むな」
負けん気の強い三成の事だ、元就の食べる炒り豆の数が多い事が気に食わないのだろう。
それを察した元就は高飛車にも見える笑みを漏らした。
「ところで貴様は豆を食ったのか」
炒り豆を口いっぱいに放り込む三成を心配そうに見るなまえを元就は呼ぶ。
「あ、食べてない。…あんまり好きじゃないしなあ」
「馬鹿め」
「あいたっ!」
いつものように采配を投げつけ、元就は小さい体で豆を掲げた。
「年の数だけ食せ、命令だ」
「そんな命令受けつけな…っ!?」
横から急に腕を引かれ、なまえはしたたか頭を打ちつけた。
「そうだ、貴様も食えッ!」
「石田、豆の準備は出来ておるだろうな」
サアッと顔が青くなる。
「日輪の申し子たる我からの洗礼よ、甘んじて受けるがよい」
元就のニヒルな笑みと三成の手にある大量の豆を見ながらなまえは気が遠くなるのを感じた。