13


夕方の神社はすでに人気が無くなっていた。
初詣のピークはとっくに過ぎ去っていたようで、ちらほらと参拝客が見えるだけだ。


お参りを済ませたなまえは甘酒を片手に神社の裏手へと向かった。
ちなみに三成はここのところ活発に活動しすぎたせいか体調が思わしくなく、家で留守番をしている。


家康がいたら新年の挨拶しようと思ったんだけどなあ。


忙しいのだろうか、神社の敷地内を一周してきてはみたが家康の姿は見当たらない。
諦めて帰ろうとしたときであった。


「なまえー!」


聞き覚えのある声がなまえを呼び止めた。


「あ、家康。明けましておめでとー」

「ああ、明けましておめでとう。今年もよろしくな」


爽やかに笑った和装の家康がなまえに、さりげなく古めかしい袋を手渡す。


「これ何?」

「ワシもよく知らんが祖父がなまえに渡せと言ってな。何でも、最近のなまえの周りからはよくない気を感じるんだそうだ」

「三成の事かなあ、もしかして」


苦笑いのなまえ。


「もしそうだとしたらあんまり危機感を覚える事じゃないな。まあ、貰っておいてくれなまえ」


その方が祖父も安心するだろうしな。それから、そいつは日の光がよく当たる場所に置いてやってくれ。

家康はそれだけ告げるとまたなと手を振り、忙しそうに元来た道を戻っていった。

勢いで受け取ってしまったなまえだったが、ずしりと腕にかかる重みを感じて少しだけ後悔した。









「ただいま」


無言でチラリと視線を寄越した三成の横顔が、未だに真っ青なのでああまだ体調よくないんだとなまえは一人納得をした。

「なんだそれは」


三成に睨みつけるようにして見られた挙げ句、顎で示された古めかしい袋をなまえは掲げる。
そして、なんだろうねと返せば三成は眉間に皺を寄せた。


「貴様は知らんだろうがそれは社に安置されていたものだろう」

「え」

「正真正銘の馬鹿だな」

「いやいや、これが御神体とかある訳ないよ。何か家康が軽々しくくれた物だし」


私の知った事ではない、三成はそういうなり顔を背けてしまう。


「み、みーくんちょっとどうにかしてよこれ!」

「貴様が持ち込んだ厄介事を何故私が処理しなければならない」

「そんな冷たい事言わないで…いだ!?」


いきなり額目掛けて飛んできた何かによって、なまえは衝撃を受けた。


「何これ」


足元にあったのはミニサイズなはたきで、思わず三成を睨む。


「物投げないでよ、三成。確かに少し鬱陶しかったかもしれないけどさあ」

憎々しげに三成を睨む。


「私ではない、そいつだ」


三成が顎で示したのは古めかしい袋で、その袋はもぞもぞと蠢いていた。


「ひっ!?」


思わず袋から手を離したなまえだったが、袋が床に叩きつけられるその瞬間、肌色の何かが勢いよく飛び出した。








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