「三成、寒い…」
「私に言ってもどうにもならんだろう、馬鹿か貴様は」
ぶるり、と体を震わせたなまえは隣の三成を盗み見た。
平然とした顔をしているが、いつもより顔が白い。寒いのは同じようだ。
二人がいるのは屋上。
テレビで流星群の情報を得たなまえは三成を連れ出し、天体観測へと洒落込んだ。
「そもそも貴様が流星群を見るなどと言い出さなければ…」
忌々しげに呟かれた声は無視する事に決めて、なまえはくるまっている毛布を軽く引っ張った。
「三成もうちょい寄ってよ」
「断る」
「寒いくせに」
「黙れ」
二人で毛布を共有しているため、どうしても隙間が出来てしまう。
その隙間から吹き込む風は冷たい。
「もういい、わたしがそっち行く」
「………」
ごそごそと距離を詰めたなまえに三成はちらりと視線を寄越すだけで、何も言わなかった。
暖かくなったからだろうか、なまえは湧き上がってくる睡魔に打ち勝とうと目をこすった。
三成はさっきから微動だにしない。
欠伸をかみ殺そうと苦心するなまえを見やるだけだ。
「…眠いのか」
半分夢見心地であったなまえに三成がついに声をかけた。
「うん…」
「そうか」
素っ気ない声を聞いたのを最後になまえはとうとう意識を手放した。
▼△
寒い。
頬を撫でた風がやけに寒いように感じてなまえは目を開けた。
「寒い…」
「見ろ、今が流星群のピークだ」
つい、と指された夜空を見上げればいつもならお目にかかれない流星群が夜空を飛び交っていた。
「うわあ…。スゴい、綺麗」
「………」
少し風が吹いてきたためか空には雲一つ無く、大量の流星群を見る事が出来た。
「三成!スゴいね、雨みたいだよ」
そうだな、と珍しく険しくない口調で返してきた三成の顔は流星群の明かりでほんのりと照らされ、なまえは思わず目を瞬かせた。
「なんかさ」
「なんだ」
「今、三成がすっごくカッコよく見えた」
「黙って星を見ろ!」
三成の方を向けていた顔をがっしりと掴まれ、ぐいぐいと上を向かされる。
「あいたたたたた、力強くないですかね三成さんっ」
「うるさい黙れ斬滅されろ」
ちらりと見えた三成の顔がむず痒そうでなまえは照れてるんだな、と思わず笑った。
と同時に、頬を力いっぱいつねられた。
流星群よりも三成が気になった午前二時。