ヤバいヤバいヤバい!

なまえは大学からの帰途を全速力で走っていた。
チラリと見た腕時計は、9時を指そうとしている。

いつもならばすでに夕飯を食べている時間だ。
いや、それどころか食べ終わっている時間かもしれない。
どちらでもいい、となまえは思った。

どちらにせよ、三成はもう烈火のごとく怒っているのだろうから。




△▼




「遅い」


扉を開けたと同時に目に飛び込んできた三成の姿に、なまえは顔をひきつらせた。


「今を何時だと思っている」

「9時過ぎ、です」

「夕餉の時間は何時だ、言ってみろ」

「8時半かなー…?」

「分かっているのであれば話は早い、何故分かっていながら遅れた!」

「大学で調べものしてて…」

「それだけか」


目の前で仁王像のように立っている三成を見てなまえは思う。

浮気がバレた時の夫の気持ちってこんな感じなんだろうなあ…。怖い。


「質問に答えろ、私に釈明する以外の事を考えるなッ」

「は、はい!あとは家康と教授の話聞いてました…っ」


家康、の名前がなまえの口から出てきた途端に三成の顔が更に険しくなる。


「私より家康を優先させたというのかっ」

「家康を優先させた訳じゃないよ!?教授優先させたんだよ!?」

「おのれ家康…ッ」

「落ち着こうよ三成!」


今にも吼え出すんじゃないかとヒヤヒヤしていたなまえは、三成に引き寄せられ体制を崩した。


「くすぐったいってこれ!」


首元に当たる三成の前髪はとてもこそばゆい、なまえはじたばたとするが一向に離される気配は無い。


「…走って帰ってきたのか」


興奮が落ち着いたらしい三成が呟く。


「え、ああ、うん。三成待ってるだろうなあって思ったからさ、教授の話長引きそうだから家康見捨てて走ってきたんだ」


よく分かったね。あ、もしかして汗臭い!?

なまえはそう言ってすんすんと鼻を鳴らすが、全く分からない。
むしろ三成が近すぎて、香を焚きしめたような三成の香りしかしないのだ。


「そうではない。…夕餉は何だ」

「豆腐のハンバーグにしようかと…。あ、走ってきたから豆腐グチャグチャになったかも」

「どうせ混ぜるのなら構わんだろう」


三成の機嫌はようやく直ったらしい、なまえは安堵した。


「さっさと作れ、私を待たせるな」

「了解!」


引き寄せられていた体を離し、なまえはキッチンへ駆けていった。


さっきのやり取り、新婚さんみたいだったなあ。

などと思いながら。




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捧物の別バージョンでした
何だか軽い嫉妬じゃなくなってしまったので(笑)




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